この記事でわかること
- コンバージョンが取りこぼされる構造と、拡張コンバージョンの役割
- ハッシュ化と照合の仕組み
- 3つの設定方法と、それぞれの現実的な難易度
- 同意モードとの関係
- 導入すべき企業・優先度が低い企業の判断軸
- 設定前に社内で確認しておくべき項目
なぜ必要になったのか
広告の成果を測る仕組みは、長らくブラウザのCookieに依存してきました。しかしブラウザ側の制約が強まったことで、広告をクリックした人が実際にコンバージョンしても、それを広告側で紐づけられないケースが増えています。
これが起きると、実務では2つの問題が生じます。ひとつは成果が実態より少なく見えること。もうひとつが、より深刻で、自動入札の学習が不正確なデータで進むことです。自動入札はコンバージョンデータを基準に最適化するため、計測が漏れているほど判断がずれます。
拡張コンバージョンの位置づけ:Googleの公式ヘルプでは、拡張コンバージョンは「より正確なコンバージョン測定と高度な入札単価設定を可能にする機能」で、既存のコンバージョンデータを補完するものと説明されています。既存の計測を置き換えるのではなく、その上に足す機能だという点を押さえてください。
仕組みとハッシュ化
拡張コンバージョンは、次の流れで動きます。
サイト上でファーストパーティデータを取得する
ユーザーがコンバージョンした時点で、フォームに入力されたメールアドレス、氏名、住所、電話番号といった自社が直接受け取ったデータを取得します。どの項目を使うかは設定によります。
どの項目を送るかは自社で決められる。最小限から始めてよいSHA256でハッシュ化して送信する
取得したデータは、SHA256という一方向のハッシュアルゴリズムで変換されてからGoogleに送られます。一方向とは、変換後の値から元のデータを復元することが想定されていないという意味です。生のメールアドレスがそのまま送信されるわけではありません。
タグ側でハッシュ化される仕組みを理解しておくと社内説明が楽になるGoogleアカウントと照合してクリックに紐づける
送られたハッシュ値を、ユーザーがログインしていたGoogleアカウントの情報と照合し、そのコンバージョンを広告のクリックなどのイベントと関連づけます。これによって、Cookieでは追えなかった経路のコンバージョンが計上されるようになります。
すべてのコンバージョンが拾えるわけではない。あくまで補完3つの設定方法
ウェブ向けの拡張コンバージョンは、次の3つの方法で設定できます。
| 方法 | 難易度 | 向いているケース |
|---|---|---|
| Googleタグマネージャー | 中 | すでにGTMを導入していて、タグ管理を自社で行える |
| Googleタグ | 中 | サイトに直接タグを設置している構成 |
| Google Ads API | 高 | サーバー側から送信したい、開発リソースがある |
多くの中小企業にとって現実的なのはGTM経由です。ただし「フォーム送信時に、どの入力欄の値を取得するか」を指定する必要があるため、サイトの構造を把握している人が関わったほうが確実に動きます。制作会社にサイトを任せている場合は、実装を依頼するのが現実的です。
設定して終わりにしない:実装したら、実際に自分でフォームを送信して、意図した値が取得されているかを確認してください。「設定した」と「動いている」は別です。特に外部のフォームサービスを使っている場合や、送信後にページ遷移しない構成では、想定どおりに取得できないことがあります。
同意まわりの論点
同意モードを実装している場合、広告Cookieはad_storageの同意ステータスの対象になります。同意管理と拡張コンバージョンは別々に設定するものなので、両方を導入している場合はそれぞれの設定が意図どおりかを確認してください。
あわせて、実務上は次の点を社内で整理しておく必要があります。
- プライバシーポリシーの記載——広告の効果測定のためにデータを利用することが書かれているか
- フォームでの説明——入力された情報の利用目的が明示されているか
- 取得項目の範囲——必要以上の項目を送っていないか
- 社内の判断者——この設定を誰の承認で入れるのか
技術と運用は別問題:ハッシュ化されているという技術的な事実と、自社としてそのデータ送信を行ってよいかという判断は別です。設定作業は数十分で終わりますが、社内での確認は先に済ませておいてください。判断に迷う場合は、法務や顧問の専門家に確認することをおすすめします。
導入すべきかの判断
| 状況 | 優先度 | 理由 |
|---|---|---|
| フォームでメールアドレスを取得している | 高い | 照合に使えるデータがある |
| 自動入札を使っている | 高い | 学習の精度に直結する |
| コンバージョン数が一定量ある | 高い | 補完の効果が数字に表れやすい |
| 既存のCV計測に不具合がある | まず修正 | 土台が崩れた状態では意味がない |
| コンバージョンが電話のみ | 低い | 照合に使うデータを取得していない |
| 配信を始めたばかり | 低い | 先にやるべき整備が多い |
優先順位としては、「既存のコンバージョン計測が正しく動いていること」が絶対の前提です。計測そのものにずれがある状態で拡張コンバージョンを足しても、不正確なデータが増えるだけになります。
設定前の確認事項
拡張コンバージョン導入チェックリスト
【前提の確認】
- 既存のコンバージョン計測が正しく動いている
- コンバージョンの定義が事業の成果と一致している
- 二重計測が起きていない
- 自社アクセスが除外されている
【社内での確認】
- プライバシーポリシーの記載を確認した
- フォームでの利用目的の説明を確認した
- 送信する項目を必要最小限に絞った
- 設定を入れる判断者の承認を得た
【設定後の確認】
- 自分でフォームを送信して動作を確認した
- 意図した値が取得されているか確認した
- 診断レポートでエラーが出ていないか見た
- 導入前後で計測CV数と実際の問い合わせ件数の差を比較した
最後の項目が実務上いちばん重要です。レポート上のコンバージョン数と、社内で実際に受け取っている問い合わせ件数の差——この差が縮まっていれば、拡張コンバージョンが機能していると判断できます。数字だけを眺めていても効果は分かりません。
Web広告運用代行
計測が漏れている状態では、自動入札の学習も判断も正しく進みません。LnXの広告運用代行では、配信の前段として計測設計の確認から入り、成果が正しく見える状態を作ったうえで運用します。まずは現状の計測状況をご相談ください。
広告運用代行の詳細を見るLnXの見解
拡張コンバージョンについてご相談をいただいたとき、私たちがまず確認するのは「今のコンバージョン計測は、そもそも正しいか」です。この機能は既存の計測を補完するものなので、土台がずれていれば、ずれたデータが増えるだけになります。実際、拡張コンバージョンを検討していた企業で、先に既存のCV設定の誤りが見つかり、そちらを直しただけで数字の見え方が変わったケースもあります。
もうひとつお伝えしたいのが、技術的な安全性と、自社としての判断は別問題だということです。ハッシュ化されているという説明は事実ですが、顧客から預かった情報を広告プラットフォームに送るという行為をどう位置づけるかは、各社が決めることです。設定作業自体は難しくないぶん、社内の確認を飛ばして入れてしまいがちですが、プライバシーポリシーとの整合は先に確認しておくことをおすすめします。
そのうえで、自動入札を使っているアカウントにとっては計測精度が成果に直結するのも事実です。学習の材料が実態に近いほど、配信の判断も正確になります。LnXでは広告・LP・計測を同じ担当が見るため、計測のどこが漏れていて、どこから手を付けるべきかを整理したうえでご提案しています。まず現状を確認したいという段階でも、お気軽にご相談ください。
よくある質問
Q 拡張コンバージョンを入れると、顧客の個人情報がGoogleに渡るのですか?
メールアドレスなどのファーストパーティデータは、SHA256という一方向のハッシュアルゴリズムで変換されてから送信されます。ハッシュ化された値から元の情報を復元することは想定されていません。ただし、どのデータを送るかは設定次第であり、送信すること自体をどう扱うかは自社のプライバシーポリシーや利用規約との整合の問題になります。設定前に、社内で扱いを確認してください。
Q すでにコンバージョン計測は動いています。それでも必要ですか?
拡張コンバージョンは既存の計測を置き換えるものではなく、補完する機能です。ブラウザの制約などで計測が漏れているコンバージョンを、ハッシュ化したデータの照合によって拾い直す位置づけになります。現在の計測が正しく動いていることが前提なので、まず既存の計測に不具合がないかを確認してから検討してください。
Q 設定は自社でできますか?
設定方法はGoogleタグマネージャー、Googleタグ、Google Ads APIの3つがあります。GTMを使う方法が比較的取り組みやすいですが、フォーム送信時にどの値を取得するかを指定する必要があるため、サイトの構造を理解している人が関わったほうが確実です。制作会社にサイトを任せている場合は、実装を依頼するのが現実的です。
Q 同意管理ツールを入れている場合、何か影響がありますか?
同意モードを実装している場合、広告Cookieはad_storageの同意ステータスの対象になります。同意管理と拡張コンバージョンは別々に設定するものなので、両方を入れている場合はそれぞれの設定が意図どおりかを確認してください。同意管理を入れているから拡張コンバージョンが不要になる、という関係ではありません。
Q 効果はどのくらいで分かりますか?
設定後すぐに劇的な変化が出るものではありません。計測されるコンバージョン数が実態に近づくことで、自動入札の学習の精度が上がるという間接的な効果が中心です。導入前後で計測CV数と、社内で受け取っている実際の問い合わせ件数の差がどう変わったかを比べると、効果を把握しやすくなります。