この記事でわかること

  • 計測を「後から直す」ことが最も高くつく理由
  • 事業ゴールの確定から実装検証までの5ステップ
  • イベント名を増やさず、パラメータで内訳を持たせる設計の考え方
  • GA4の命名ルールと、見落としやすい登録数の上限
  • スプレッドシート1枚で作る計測設計書の8項目
  • キーイベントの増やしすぎなど、やりがちな失敗5つ

計測は「後から直す」が最も高くつく

GA4の相談で最も多いのが、「数字は取れているが、意思決定に使えない」という状態です。ページビューとセッションは見えている、コンバージョンも一応設定されている。しかし「どの経路から来た人が、どこで離脱して、何をした人が問い合わせているのか」を聞かれると答えられない。これは分析力の問題ではなく、計測設計の問題です。

GA4はデータを遡って作り直すことができません。イベントを追加しても、取得できるのはその日以降のデータだけです。つまり「あとで必要になったら足せばいい」という発想が、そのまま数か月分のデータ欠損になります。半年後に「去年と比較したい」となったときに、比較する材料そのものが存在しないという事態は、実務でよく起きます。

計測設計書とは:「何を、どんな名前で、どこで、なぜ計測するか」を一覧にした社内向けのドキュメントです。実装者・運用者・分析者が別々でも同じ理解で作業でき、担当者が変わってもデータの意味が引き継がれます。特別なフォーマットは不要で、スプレッドシート1枚で十分に機能します。

設計書がないと何が起きるか

  • 同じ行動が複数の名前で記録される——「contact_submit」と「form_submit」が並存し、合計値が誰にも分からなくなる
  • キーイベントが増えすぎて意味を失う——ページ閲覧までコンバージョン扱いになり、「今月のCV数」が実態と乖離する
  • 担当者の交代でデータの意味が失われる——イベント名だけ残り、何を指しているか誰も説明できない
  • 広告側の最適化がずれる——広告の最適化基準が誤った行動に設定され、成果の出ないユーザーを学習し続ける

最後の点は特に見落とされがちです。GA4の計測は分析のためだけのものではなく、広告プラットフォームが「何を成果と見なすか」の基準にも直結します。ここがずれていると、広告費をかけるほど間違った方向に最適化が進みます。

計測設計の5ステップ

設計の手順は次の5段階です。1と2を飛ばしてイベント名の議論から入るのが、最もよくある失敗です。

1

事業のゴールを1つに決める

サイトが最終的に何を生むのかを1つに絞ります。BtoBなら「問い合わせ」または「資料請求」、店舗型なら「予約」や「電話」、ECなら「購入」です。ここが2つも3つもあると、以降の優先順位がすべて曖昧になります。複数ある場合は主・従を明確にしてください。

「このサイトで一番増やしたい行動は何か」を経営側と合意してから着手する
2

ゴールまでの経路を分解する

訪問からゴールまでに、ユーザーが通る段階を書き出します。例:広告クリック → LP到達 → 料金セクション閲覧 → フォーム到達 → フォーム入力開始 → 送信完了。この各段階が、そのまま計測すべきイベントの候補になります。紙に書くだけで5分で終わる作業ですが、これをやるかどうかで設計の質が決まります。

段階ごとに「ここで落ちていたら何を改善するか」まで書き添える
3

イベント名とパラメータを決める

段階ごとにイベント名を割り当てます。このとき重要なのは、イベント名を細かく増やさず、内訳はパラメータで持たせることです。「form_submit_contact」「form_submit_document」と分けるのではなく、「form_submit」というイベントに form_type というパラメータを付けて区別します。

イベント名を増やしすぎると、後から集計も管理も難しくなる
4

キーイベント(旧コンバージョン)を指定する

計測したイベントのうち、事業上の成果に直結するものだけをキーイベントに指定します。GA4では2024年に「コンバージョン」から「キーイベント」へ名称が変更されました。指定は多くて3〜4個までに抑え、「これが増えたら売上が増える」と言い切れる行動だけを選んでください。

ページ閲覧やスクロールはキーイベントにしない。あくまで途中経過として見る
5

実装し、必ず検証する

GTM(Googleタグマネージャー)で実装した後、プレビューモードとGA4のリアルタイムレポートで、実際に自分でフォームを送信して発火を確認します。「設定したから取れているはず」で運用を始めると、数か月後にゼロ件だったと気づくことになります。

実装後1週間は、管理画面のCV数と実際の問い合わせ件数を毎日突き合わせる

「サンクスページ到達」だけに頼らない:フォーム送信の計測をサンクスページのURL到達だけで行っていると、ページ遷移しないフォームや、外部フォームサービスを使っている場合に取りこぼします。また、サンクスページのURLを直接開かれた場合もカウントされてしまいます。フォーム送信そのものをイベントとして取得し、サンクスページ到達は補助として持つ設計が安全です。

イベント名・パラメータの命名ルール

命名規則を先に決めておくと、後から見返したときの理解しやすさがまったく違います。技術的な制約と、実務上の推奨をあわせて整理します。

項目 ルール 備考
使える文字 半角英数字とアンダースコア。先頭は文字 日本語やスペースは使えない
大文字・小文字 区別される すべて小文字で統一するのが無難
長さの上限 イベント名・パラメータ名は40文字、パラメータ値は100文字が上限 上限は変更されることがあるため公式ヘルプで確認
予約語 GA4が自動収集するイベント名(page_view、session_start など)は使わない 同名で送るとデータが混ざる
推奨イベント Googleが定義する推奨イベント名(generate_lead、purchase など)があれば優先して使う 標準レポートで扱いやすくなる

命名の実例

中小企業のBtoBサイトを想定した、シンプルな設計例です。

ユーザーの行動 イベント名 パラメータ キーイベント
フォームの入力を開始した form_start form_type
フォームを送信した form_submit form_type(contact / document / estimate)
電話番号をタップした tel_tap page_group
料金セクションを閲覧した view_section section_name
資料PDFをダウンロードした file_download file_name

上限に注意:Webサイトの計測ではイベント名の種類数そのものに上限はありませんが、管理画面の「イベントを作成」「イベントを変更」で登録できる数や、カスタムディメンションの登録数には上限があります。イベント名を細かく分けるほどこの上限に近づくため、名前は少なく・パラメータで内訳を持たせる設計が、管理面でも有利になります。上限値は変更される場合があるため、Googleアナリティクス ヘルプで最新の数値を確認してください。

カスタムディメンションへの登録を忘れない

パラメータを送っただけでは、GA4のレポート上で内訳を見ることはできません。カスタムディメンションとして登録して初めて、レポートの軸として使えるようになります。「form_type を送っているのに、種類別の内訳が見られない」という相談の大半がこの登録漏れです。登録した日以降のデータからしか反映されない点にも注意してください。

計測設計書に書く項目

設計書はスプレッドシート1枚で構いません。列として持っておくべき項目は次のとおりです。

内容 書く理由
No. 通し番号 実装依頼や修正依頼のときに指し示せる
計測したい行動 日本語で書く(例:問い合わせフォームの送信) 非エンジニアが読んで分かる
イベント名 form_submit など 実装の指示になる
パラメータ名/値 form_type:contact / document 取りうる値まで書くと実装ミスが減る
発火条件 どのページの、どの要素で、どう発火するか GTMの設定内容と1対1で対応する
キーイベント指定 ◯ / — 成果の定義が一目で分かる
目的・使い道 この数字を何の判断に使うか 使い道のない計測を作らないための歯止め
実装状況・確認日 未/済、検証した日付 取れていないイベントを放置しない

特に効くのが「目的・使い道」の列です。ここが埋まらないイベントは、たいてい「なんとなく取っておきたい」だけの計測です。実装の手間と管理コストがかかるだけなので、思い切って削ってください。設計書の目的は網羅ではなく、判断に使える数字を確実に取ることです。

運用のコツ:設計書は作って終わりではなく、サイトを改修するたびに更新する前提で運用してください。フォームを増やした、LPを作った、ボタンの位置を変えた——こうした変更のたびに計測は壊れます。改修の依頼書に「計測設計書の該当行を更新する」を1項目入れておくだけで、事故がかなり減ります。

計測設計チェックリスト

【設計フェーズ】

  • サイトの最終ゴールを1つに絞れている
  • 訪問からゴールまでの経路を段階に分解している
  • 各イベントの「使い道」を1行で書けている
  • キーイベントを3〜4個以内に抑えている

【命名フェーズ】

  • イベント名を増やさず、内訳はパラメータで持たせている
  • すべて小文字・アンダースコア区切りで統一している
  • GA4の自動収集イベントと同名になっていない
  • パラメータをカスタムディメンションに登録している

【実装・検証フェーズ】

  • GTMのプレビューで実際に発火を確認した
  • GA4のリアルタイムでイベントとパラメータを確認した
  • 自社IP・関係者のアクセスを除外する設定を入れた
  • 1週間、管理画面の件数と実際の問い合わせ件数を突き合わせた

計測設計でやりがちな失敗5つ

1. キーイベントを増やしすぎる

スクロール、ページ閲覧、外部リンククリックまでキーイベントにすると、「今月のCV数300件」といった実態と乖離した数字が出ます。売上に直結する行動だけに絞ってください。判断に迷ったら、「これが100件増えたら売上はいくら増えるか」を計算できるかで線を引くと決めやすくなります。

2. イベント名を細かく分けすぎる

ページごと・ボタンごとにイベント名を作ると、数か月で管理不能になります。名前は行動の種類、内訳はパラメータ——この原則を最初に決めておくと、後から破綻しません。

3. 実装後に検証していない

「設定した」と「取れている」は別です。特にフォームを外部サービスに置いている場合や、SPA構成のサイトでは、想定どおりに発火しないことが珍しくありません。実装したら必ず自分で1回送信して、リアルタイムレポートで確認してください。

4. 自社アクセスを除外していない

社内からのテスト送信や、制作会社の確認アクセスが混ざったまま運用すると、件数もCVRも実態からずれます。特にアクセス数の少ないサイトほど影響が大きくなります。IP除外の設定は、計測開始と同時に行ってください。

5. 広告側の計測と揃えていない

GA4のキーイベントと、広告プラットフォーム側の最適化イベントが別々の行動を指しているケースがあります。GA4では「フォーム送信」、広告側では「サンクスページ到達」——このズレが、数値の不一致と最適化のずれを同時に生みます。両者が同じ行動を指しているかは、設計の段階で確認してください。

マーケティング顧問制度

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計測設計は一度作れば終わりではなく、サイトの改修や施策の追加のたびに見直しが必要になります。設計書づくりから実装後の運用、数字の読み方の共有まで、マーケティング顧問としてご一緒します。

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LnXの見解

計測のご相談をいただいたとき、私たちが最初に見るのは設定内容ではなく、「その数字を誰が、何の判断に使っているか」です。使い道のない計測は、どれだけ精緻に組んでも管理コストになるだけで終わります。逆に、判断に使う数字が明確なら、必要なイベントは驚くほど少なくて済みます。中小企業のサイトであれば、キーイベント2〜3個と補助イベント数個で十分に運用できることがほとんどです。

もう一つ強調したいのは、計測設計は「作り直しが効かない」数少ない領域だということです。広告のクリエイティブは翌週に差し替えられますし、LPの見出しも変えられます。しかしデータは、取り始めた日からしか存在しません。だからこそ、サイトを作るタイミングや広告を始めるタイミングで、最低限の設計だけは先に済ませておくことをおすすめしています。

そのうえで現実的な話をすると、多くの企業にとって難しいのは設計そのものより、改修のたびに設計書を更新し続ける運用のほうです。ここは社内に担当を置いても形骸化しやすい部分なので、外部の目が定期的に入る形にしておくと維持しやすくなります。LnXでは広告・LP・計測を同じ担当が見るため、サイトを触った時点で計測への影響を判断でき、「気づいたら数字が取れていなかった」という事態を防いでいます。

よくある質問

Q 計測設計書は必ず作らないといけませんか?

小規模なサイトで、計測する行動が1つ2つしかないなら、必須ではありません。ただし「担当者が変わったときに引き継げるか」「半年後に自分で説明できるか」を考えると、スプレッドシート1枚は作っておく価値があります。作成にかかる時間は初回で1〜2時間程度で、後から設定を読み解く手間に比べれば圧倒的に短く済みます。

Q キーイベントはいくつまで設定してよいですか?

技術的な上限とは別に、実務では3〜4個までに抑えることをおすすめします。多いほど「今月のCV数」が何を指すのか曖昧になり、判断に使えなくなるためです。売上に直結する行動を主軸に置き、その手前の行動はキーイベントにせず、通常のイベントとして推移を見る形が扱いやすくなります。

Q イベント名は日本語で付けられますか?

付けられません。GA4のイベント名・パラメータ名は半角英数字とアンダースコアのみで、先頭は文字である必要があります。日本語で分かりやすくしたい場合は、計測設計書側に「日本語での説明」列を用意し、そこで対応づけるのが実務的です。

Q パラメータを送っているのにレポートで内訳が見られません。

カスタムディメンションへの登録が漏れている可能性が高いです。GA4ではパラメータを送っているだけではレポートの軸として使えず、カスタムディメンションとして登録する必要があります。また、登録した日以降のデータからしか反映されないため、過去分は遡って見られない点にも注意してください。

Q すでに運用中のGA4でも設計をやり直せますか?

やり直せますが、過去のデータは変わりません。現実的な進め方は、既存のイベントを一覧化して「使っているもの・使っていないもの」を仕分けし、不足している計測を追加していく形です。既存のイベント名を大きく変更すると過去データとの連続性が切れるため、変更する場合は切り替え日を記録に残しておいてください。

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