この記事でわかること
- LPの表示速度が、CVRだけでなく広告費の回収率にも効く3つの経路
- Core Web Vitals(LCP・INP・CLS)の合格ラインと、75パーセンタイル判定の意味
- PageSpeed Insights・Search Console・DevToolsの役割の違いと使い分け
- 遅いLPに共通する5つの原因(画像・タグ・フォント・未使用コード・レイアウトシフト)
- 費用対効果の高い順に進める改善5ステップと、確認のチェックリスト
表示速度は「CVR」だけでなく「広告費」にも効く
LPの表示速度が話題になるとき、多くは「SEOに影響する」という文脈で語られます。ただ、広告でLPに集客している中小企業にとって、影響がより直接的に出るのは広告費のほうです。速度の遅れは、次の3つの経路で成果を削ります。
クリック済みのユーザーが、LPを見る前に離脱する
もっとも痛い経路がこれです。広告のクリック課金はすでに発生しているのに、ページが表示される前にユーザーが戻ってしまう。支払った広告費が、コンテンツを1文字も読まれないまま消える状態です。CVR改善の議論以前の問題として、まずここを塞ぐ価値があります。
とくにスマートフォンの回線環境はばらつきが大きく、社内のWi-Fi環境で確認して「普通に速い」と感じていても、外出先の実ユーザーには全く違う体験になっていることがあります。
計測がずれ、広告の判断そのものが狂う
計測タグが発火する前に離脱されると、そのクリックはGA4のセッションとして記録されないことがあります。結果として「広告管理画面のクリック数」と「GA4のセッション数」が大きく乖離し、CVRの計算根拠が崩れます。
数値ずれの原因は速度だけではありませんが、乖離が2〜3割を超えている場合、表示速度は疑うべき候補のひとつです。原因の切り分け方はMeta広告とGA4の数値がずれる理由とは?原因と対処法で整理しています。
広告プラットフォーム側の評価に影響する
Google広告には広告の品質にランディングページの利便性を含める考え方があり、Meta広告にもランディングページの体験に関する指針があります。読み込みが極端に遅いページは、配信効率の面で不利に働き得ます。
ただし「速度を上げれば必ずCPCが下がる」といった単純な因果は保証されていません。過度に期待せず、ユーザーが離脱しない状態を作った結果として配信も安定する、という順番で考えるのが健全です。
先に断っておきたいこと:「表示速度を1秒縮めるとCVRが◯%上がる」といった数字が引用されることがありますが、実際の効果はサイトの業種・単価・流入経路によって大きく変わります。この記事では一般化された効果量ではなく、Googleが公開している判定基準と、自社データで確認する手順に絞って解説します。
Core Web Vitalsの3指標と合格ライン
ページ体験を測る共通指標として、GoogleはCore Web Vitals(ウェブに関する主な指標)を定義しています。現在の3指標と、「良好」と判定される基準は次のとおりです。
| 指標 | 測っているもの | 良好 | 要改善 | 不良 |
|---|---|---|---|---|
| LCP Largest Contentful Paint |
メインコンテンツ(多くはファーストビューの画像や見出し)が表示されるまでの時間 | 2.5秒以下 | 2.5〜4.0秒 | 4.0秒超 |
| INP Interaction to Next Paint |
タップやクリックなどの操作に対して、画面が反応するまでの時間 | 200ミリ秒以下 | 200〜500ミリ秒 | 500ミリ秒超 |
| CLS Cumulative Layout Shift |
読み込み中にレイアウトがどれだけずれるか(視覚的な安定性) | 0.1以下 | 0.1〜0.25 | 0.25超 |
3指標に共通する重要な前提が2つあります。ひとつは、判定に使われるのは実ユーザーのデータの75パーセンタイル値であること。つまり「実際の訪問者の4分の3以上が良好な体験をしているか」で判定されます。平均値ではないため、一部の遅い環境が足を引っ張ります。
もうひとつは、INPは2024年3月にFID(First Input Delay)を置き換えて導入された指標だということです。古い記事や社内資料がFIDのまま止まっている場合は、見る指標を更新してください。FIDは「最初の操作への反応」だけを見ていましたが、INPはページ滞在中のすべての操作を対象にするため、フォーム入力の多いLPでは特に重要になります。
何で測るか:3つのツールの使い分け
速度改善の相談で最初に起きるのは、「ツールごとに点数が違う」という混乱です。それぞれ測っているものが違うので、役割を分けて使います。
| ツール | データの種類 | 向いている用途 |
|---|---|---|
| PageSpeed Insights | ラボデータ(擬似環境での計測)+フィールドデータ(実ユーザー) | 改善すべき箇所の特定。「改善できる項目」の診断が具体的で、施策の洗い出しに使う |
| Search Console 「ウェブに関する主な指標」 |
フィールドデータ(実ユーザー、期間集計) | サイト全体の実態把握と、改善後の効果確認。合否判定はここを正とする |
| Chrome DevTools(Lighthouse) | ラボデータ | 修正しながらその場で確認する開発作業用。回線速度を絞ったスマホ想定の検証も可能 |
よくある遠回り:PageSpeed Insightsの総合スコア(0〜100点)を上げること自体を目的にしてしまうケースです。あの点数はラボ環境の擬似計測をもとにした参考値で、実ユーザーの体験とは一致しません。スコアを90点にするために工数をかけるより、LCPを2.5秒以内に収めることに集中したほうが、事業的な効果は大きくなります。
遅いLPに共通する5つの原因
中小企業のLPを診断していると、遅さの原因はほぼ同じ5つに収束します。特別な技術的問題ではなく、運用の積み重ねで生まれるものがほとんどです。
1. ファーストビューの画像・動画が重い
最大の原因はこれです。デザイナーから受け取った高解像度のJPEG/PNGをそのまま設置しているケース、背景に自動再生の動画を置いているケースが典型です。LCPは多くの場合ファーストビューの画像で決まるため、ここが重いと他を最適化しても改善しません。
2. タグを入れすぎている
GTM経由で、アクセス解析・広告タグ・チャットボット・ヒートマップ・A/Bテストツール・ポップアップツールが同時に読み込まれている状態です。しかも、その多くは過去に導入して今は使っていないツールだったりします。契約を解約してもタグだけ残っているというのは、本当によくあります。
3. Webフォントの読み込み
日本語のWebフォントは文字数が多く、ファイルサイズが英字フォントとは比較になりません。デザイン上のこだわりで複数ウェイトを読み込んでいると、それだけで表示が遅れます。使うウェイトを絞る、サブセット化する、フォント読み込み中もテキストを表示する設定にする、といった対応が必要です。
4. ページビルダー・テーマ由来の未使用コード
WordPressのテーマやページビルダーで作られたLPは、実際には使っていない機能のCSS・JavaScriptまで一式読み込むことがあります。「見た目はシンプルなのに読み込みが重い」場合、この可能性が高いです。
5. レイアウトシフト(CLS)の放置
画像に幅・高さが指定されていない、広告やバナーが後から差し込まれる、Cookie同意バナーやチャットの吹き出しが遅れて表示される——こうした要因で、読み込み中に画面がガタつきます。ユーザーが押そうとしたボタンが直前でずれる状態は、CVRに直接響きます。
改善の優先順位:費用対効果の高い順に5ステップ
速度改善は、やろうと思えばいくらでも深追いできる領域です。中小企業が限られた工数で成果を出すには、効果が大きく、リスクが小さく、外注コストが低い順に進めるのが鉄則です。
| 優先度 | 施策 | 目安工数 | 誰がやるか |
|---|---|---|---|
| 1 | 不要タグ・不要ツールの削除(GTMの棚卸し) | 0.5〜1日 | 社内のマーケ担当でも可 |
| 2 | 画像の最適化(WebP化・実表示サイズへのリサイズ・遅延読み込み) | 0.5〜2日 | 制作会社/社内でもツールで対応可 |
| 3 | Webフォントの整理(ウェイト削減・表示設定) | 0.5日 | 制作会社 |
| 4 | CLS対策(画像のサイズ属性指定・後から出る要素の領域確保) | 0.5〜1日 | 制作会社 |
| 5 | サーバー・キャッシュ・配信まわりの見直し | 要相談 | 制作会社/インフラ担当 |
ステップ1:まずタグを減らす(一番効いて一番安い)
GTMのコンテナを開いて、稼働中のタグを一覧化し、「今この数字を誰が見ているか」を1件ずつ確認します。答えられないタグは止めて問題ありません。この作業は外注費がほぼかからないうえ、個人情報の取扱いの棚卸しにもそのまま使えます。速度改善のなかで最も費用対効果が高い作業です。
ステップ2:LCPを決めている画像だけを直す
すべての画像を最適化しようとすると工数が膨らみます。PageSpeed InsightsはLCPの対象要素を教えてくれるので、まずその1枚だけを圧縮・WebP化・適切なサイズに縮小します。ファーストビュー以外の画像は遅延読み込みに回せば、初期表示には影響しません。
ステップ3〜4:フォントとレイアウトのずれを潰す
フォントは使用ウェイトを絞るだけでも効果があります。CLSは、画像に幅・高さを指定し、後から挿入される要素(同意バナー、チャット、キャンペーン告知)にあらかじめ領域を確保しておくのが基本です。どちらも制作会社に依頼する場合の工数は小さく、見積もりも取りやすい部類です。
ステップ5:効果を確認する
改修後、PageSpeed Insightsで即座に変化を確認できるのはラボデータのみです。Search Consoleの「ウェブに関する主な指標」は実ユーザーのデータを一定期間集計するため、改善が反映されるまでに数週間かかります。すぐに数値が変わらなくても、慌てて追加改修をしないでください。
順序のコツ:速度改善とLPの内容改善を同時に走らせると、CVRが変わったときにどちらの効果か分からなくなります。速度は先に片付けて、その後に訴求・構成の改善に入るのがおすすめです。速度は「良し悪しが数値で明確」「一度直せば戻りにくい」ため、先に終わらせやすい領域でもあります。
LP表示速度の確認チェックリスト
Core Web Vitals/LP速度 診断チェックリスト
【現状把握】
- PageSpeed InsightsでLPのモバイル版を計測した(PCではなくモバイルを見ている)
- LCP・INP・CLSの3つの数値を、スコアとは別に記録した
- Search Consoleの「ウェブに関する主な指標」で実ユーザーデータを確認した
- LCPの対象になっている要素(画像や見出し)を特定した
【タグ・スクリプト】
- GTMに入っているタグを一覧化し、稼働中と休眠中を仕分けた
- 解約済みツールのタグが残っていないか確認した
- チャット・ヒートマップ・ポップアップの読み込み方法を確認した
【画像・フォント】
- ファーストビューの画像がWebP等の軽量形式になっている
- 画像の実サイズが、実際の表示サイズに対して過大になっていない
- ファーストビュー以外の画像に遅延読み込みが設定されている
- Webフォントのウェイト数を必要最小限に絞った
【安定性・確認】
- すべての画像に幅・高さが指定されている
- 後から表示されるバナー・同意ダイアログで画面がずれない
- 実機のスマートフォン(Wi-Fiではなくモバイル回線)で表示を確認した
- 改修後、数週間おいてフィールドデータの変化を再確認する予定を立てた
マーケティング顧問制度
LnXのマーケティング顧問制度では、LPの速度診断・タグの棚卸しから、CVR改善・広告運用の設計まで伴走します。制作会社への依頼内容の整理や見積もりの妥当性チェックもお任せください。まずは現在のLPを拝見するところから対応可能です。
マーケティング顧問を相談するLnXの見解
表示速度の改善は、マーケティング施策のなかでは珍しく「やれば確実に良くなる」ことがはっきりしている領域です。訴求やクリエイティブの検証は当たり外れがありますが、重い画像を軽くして困ることはありません。それでも後回しにされがちなのは、担当者から見て「制作会社の領域」に見えてしまうからだと感じています。
ただ、実際にやってみると、効果が大きい作業の上位は制作スキルを必要としません。使っていないタグを外す、ファーストビューの画像を1枚差し替える。この2つだけで体感が変わるLPは相当な数あります。逆に、サーバーの移設やコードの最適化といった大掛かりな話から入ると、費用も期間も膨らみ、結局着手されないまま終わります。
もうひとつ強調したいのは、速度改善は「広告費の回収率」の話だという点です。月10万円の広告費を使っていて、LP到達前の離脱が1割あるなら、毎月1万円が読まれないまま消えている計算になります。改修費が数万円なら、数か月で回収できる投資です。CVR改善に取り組む前の土台として、まずここを整えることをおすすめします。LP全体の改善観点はLPのCVRを改善する方法|広告成果を上げるチェックポイント完全版にまとめています。
よくある質問
Q PageSpeed Insightsのスコアは何点あれば十分ですか?
総合スコアの点数自体を目標にする必要はありません。あの数値はラボ環境の擬似計測にもとづく参考値で、実ユーザーの体験とは一致しないためです。判断の軸にすべきはCore Web Vitalsの3指標で、LCPが2.5秒以下、INPが200ミリ秒以下、CLSが0.1以下であれば良好とされています。しかも判定は実ユーザーデータの75パーセンタイル値で行われるため、合否はSearch Consoleの「ウェブに関する主な指標」で確認するのが確実です。
Q 表示速度を改善すると、CVRはどのくらい上がりますか?
業種・単価・流入経路によって差が大きく、一律の数字をお伝えすることはできません。「1秒の短縮で何%改善」といった数値が引用されることもありますが、自社に当てはまる保証はないと考えてください。より確実に見積もれるのは、広告のクリック数とGA4のセッション数の差です。ここに乖離があるなら、LP到達前に失っているクリックが存在し、その分の広告費が回収できていないことになります。
Q INPとFIDは何が違うのですか?
INP(Interaction to Next Paint)は2024年3月にFID(First Input Delay)を置き換えて導入された指標です。FIDは最初の操作に対する反応の遅れだけを見ていましたが、INPはページ滞在中に発生したすべての操作に対する応答性を評価します。フォーム入力やアコーディオンの開閉が多いLPでは、FIDでは問題なく見えていたページがINPでは要改善になることがあります。
Q 速度改善は制作会社に頼まないとできませんか?
効果の大きい作業の上位2つ、つまり不要タグの削除とファーストビュー画像の最適化は、社内のマーケティング担当者でも進められる範囲です。GTMで稼働中のタグを一覧化し、誰も見ていない数値のタグを止めるだけでも軽くなります。Webフォントの整理やレイアウトシフト対策、サーバーまわりの見直しは制作会社の領域ですが、依頼前に原因を特定しておくと見積もりも作業も小さく済みます。
Q 改修したのにSearch Consoleの数値が変わりません。失敗でしょうか。
すぐに結論を出さないでください。Search Consoleの「ウェブに関する主な指標」は実ユーザーのデータを一定期間集計して判定するため、改修の効果が反映されるまでに数週間かかります。改修直後の確認はPageSpeed Insightsのラボデータや開発ツールで行い、フィールドデータは時間をおいて見直すのが正しい進め方です。