この記事でわかること

  • リードは増えているのに商談が増えない会社で、最初に見るべき3つの数字
  • 施策を決める前に社内で合意しておく、リード・ホット・商談の定義
  • 名刺・資料請求・問い合わせを同じ箱に入れないためのリード分類
  • 手持ちの資料を棚卸しして、検討フェーズに割り当てる手順
  • 最初の1シナリオの作り方と、営業に渡す基準・戻ってきたリードの扱い
  • MAツールが必要になるタイミングと、導入前にできること

「リードは増えたのに商談が増えない」で止まる理由

広告や展示会、オウンドメディアを回して問い合わせと資料請求は増えた。名刺も溜まっている。それなのに営業からは「使える案件がない」と言われる——中小企業のマーケティング担当者から、この形の相談をよく受けます。

原因はたいてい、リードの量ではなく獲得したあとの扱い方が決まっていないことにあります。資料請求した人も、展示会で名刺交換しただけの人も、同じリストに入って同じメールが届く。営業は片っ端から電話をかけて、ほとんどが「今は検討していない」と言われる。数回それが続くと、営業はリストを見なくなります。

止まっている場所を特定するには、次の3つの数字を並べるだけで十分です。(1) 月あたりの新規リード数、(2) そのうち営業が接触した件数、(3) 接触から商談になった件数。この3つのどこで落ちているかで、打つ手はまったく変わります。(1)が少ないなら獲得の問題、(2)が少ないなら優先順位づけの問題、(3)が少ないならリードの質か渡すタイミングの問題です。

リードナーチャリングは、このうち(2)と(3)を動かすための設計です。「すぐには買わないが、いずれ買う可能性のある人」を、買うタイミングまで関係を保ったまま持ち越し、動き出した瞬間に営業へ渡す。それ以上でも以下でもありません。ツールを入れることでも、メールを毎週送ることでもないという点を、最初に共有しておきます。

最初に決めるのは施策ではなく、3つの定義

シナリオを書く前に、社内で言葉を揃えます。ここが曖昧なまま施策を始めると、あとで「成果が出ているのか」を誰も判断できなくなります。決めるのは次の3つです。

1

リードの定義——何をもって1件と数えるか

メールアドレスが取れたら1件なのか、会社名と部署が分かって初めて1件なのか。個人のフリーメールでの資料請求と、決裁権のある部門からの問い合わせを同じ1件として数えていると、リード数が増えても商談は増えません。最低限、企業名・担当部署・連絡先の3点が揃ったものを1件とする、といった線を引いてください。

2

ホットの定義——どうなったら営業に渡すか

スコアリングの話に見えますが、最初は点数を使わないほうがうまくいきます。「料金ページを見た」「導入事例を2本以上読んだ」「セミナーに参加して質問した」のような、具体的な行動を3〜5個並べて、そのいずれかに該当したら渡す。これで十分機能します。点数の設計に時間をかけるのは、行動の種類が増えて手作業で追えなくなってからです。

3

商談の定義——どこからを商談として数えるか

「打ち合わせをした」なのか、「課題と予算感を聞けた」なのか。ここが営業とマーケティングで食い違っていると、商談化率という数字が意味を持ちません。営業側の基準に合わせるのが原則です。マーケティング側が甘い基準を使うと、数字は良く見えるのに受注は増えない、という状態になります。

この3つは、マーケティング担当者だけで決めないでください。営業責任者と同席して、その場で合意した内容を文書に残す。ここに30分使うだけで、あとの数か月の手戻りがかなり減ります。

名刺・資料請求・問い合わせを同じ箱に入れない

手元のリードは、入ってきた経路によって温度がまったく違います。同じ内容のメールを全員に送ると、温度の高い人には物足りず、低い人には売り込みに見えます。まずは分けてください。

リードの種類 温度 最初にやること
問い合わせ(相談・見積もり依頼) 高い 当日中に営業が一次対応。ナーチャリングの対象外
資料請求・料金ページからの離脱 中〜高 数日以内に個別メール。反応があれば営業へ
セミナー・ウェビナー参加 参加後アンケートで課題を聞き、内容で仕分ける
展示会・交流会での名刺交換 低〜中 まず会社と担当者の情報を補完。定期配信に載せる
お役立ち資料のダウンロードのみ 定期配信で接点を維持。行動が出たら引き上げる
過去に失注・保留になった案件 再検討の可能性 失注理由ごとに分け、状況が変わる時期に再接触

最後の「過去の失注・保留」は、多くの会社で手つかずのまま残っています。予算がつかなかった、担当者が異動した、他社に決まったが更新時期が来る——といった理由は時間で変わります。新規獲得にかける費用と比べたとき、ここへの再接触は最も費用対効果が読みやすい打ち手です。半年から1年のスパンで、失注理由ごとにリストを持っておいてください。

手持ちのコンテンツを棚卸しして、フェーズに割り当てる

ナーチャリングを始めるときに新しくコンテンツを作り始める会社が多いのですが、順番が逆です。まず社内にあるものを全部出して、どのフェーズで使えるかを対応づける。足りないフェーズが分かってから、そこだけ作ります。

棚卸しの対象

  • 営業が商談で使っているサービス紹介資料・提案書のひな形
  • 導入事例、お客様の声、実績数値のまとめ
  • 過去に開催したセミナーの録画と投影資料
  • よくある質問への回答メモ(営業担当者の頭の中にあるもの)
  • オウンドメディアの記事、ホワイトペーパー
  • 料金表、比較資料、導入までの流れの説明

フェーズへの割り当て

検討フェーズ 読み手の状態 合うコンテンツ
課題に気づいていない 今のやり方に不満はない 他社の失敗例、業界の変化、チェックリスト
課題は認識、手段は未定 何とかしたいが方法が分からない 解決手段の比較、進め方の解説記事、セミナー
手段は決めた、発注先を探す 複数社を比べている 導入事例、費用の内訳、他社との違い、FAQ
社内稟議の段階 上長・経営に説明する材料が要る 効果試算のひな形、導入までの流れ、契約条件

最も抜けやすいのは、最後の「社内稟議」向けの材料です。担当者が乗り気でも、上長を説得する材料がないと案件は止まります。そのまま追いかけても動きません。効果の試算シート、導入スケジュール、社内説明用の1枚資料——このあたりを用意しておくと、止まっていた案件が動き出すことがあります。

最初の1シナリオを作る

完璧な仕組みを最初から作る必要はありません。いちばん件数が多いリードの入り口を1つ選び、そこから商談までの流れを1本だけ書く。まずこれを回してください。

1本目の組み立て方

  1. 入り口を決める——例:「お役立ち資料のダウンロード」
  2. ゴールを決める——例:「無料相談への申し込み」または「セミナー参加」
  3. その間を3〜5通に分解する——資料の補足 → 同じ課題の事例 → よくある質問 → 相談の案内、といった順番
  4. 配信間隔を決める——当社が実務で見ている目安としては、初回は当日〜翌日、以降は3日〜1週間おきが無理のないペースです
  5. 引き上げの条件を入れる——途中で料金ページを見た、返信があった場合は、シナリオを止めて営業へ渡す

5つ目が重要です。反応が出た人にシナリオの続きを送り続けると、温度が下がります。動いた瞬間に人が対応に切り替わる設計にしてください。

メール以外の手段も混ぜる

メールだけで温度を上げようとすると時間がかかります。中小企業の場合、次の組み合わせのほうが早く動きます。

  • 少人数のセミナー・勉強会——参加した時点で温度が上がる。アンケートで課題も聞ける
  • 電話での一次ヒアリング——件数が月数十件の規模なら、メールより早い。売り込みではなく状況確認として
  • 個別メール——一斉配信ではなく、担当者名で1通書く。反応率が明確に違います
  • 広告のリターゲティング——リストを広告側に連携して、検討期間中の接触を補う

配信の前に、法令上の前提を確認する

広告宣伝を目的とするメールは、特定電子メール法によりあらかじめ送信に同意した相手にのみ送信でき(オプトイン規制)、同意を証する記録の保存が必要です。また、送信者の氏名・名称、受信拒否の通知を受けるためのメールアドレスまたはURL、送信者の住所などをメール本文に表示する義務があります(出典:特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(特定電子メール法)|消費者庁)。

展示会で交換した名刺を配信リストに入れる場合も、同意の取り方は確認が必要です。申込フォームやアンケートの段階で、配信に関する同意のチェック項目を入れておくのが最も安全です。なお当社は法律事務所ではありませんので、自社の運用が要件を満たしているかどうかの個別の判断は、弁護士等の専門家にご確認ください。

営業に渡す基準と、戻ってきたリードの扱い

ナーチャリングが機能しなくなる最大の理由は、渡したリードが営業から戻ってこないことです。渡しっぱなしにすると、対応されたのか、対応して断られたのか、放置されたのかが分かりません。分からないので改善もできません。

渡すときに決めておく4項目

  • 渡し方——どこに、どの形式で(スプレッドシート、CRM、チャットの通知など)
  • 対応期限——受け取ってから何営業日以内に接触するか
  • 戻し方——接触した/商談になった/今ではない/対象外、の4分類で返す
  • 「今ではない」の戻し先——ナーチャリングのリストに戻し、次に見るタイミングを決める

「今ではない」を捨てないでください。この分類は、検討のタイミングがずれているだけで、対象としては正しいリードです。理由(予算期、人員、優先度、既存契約の残期間)を一言でも残しておけば、次に接触すべき時期が決まります。ここを回収する仕組みがあるかどうかで、1年後のリード資産は大きく変わります。

MAツールはいつ必要になるか

MA(マーケティングオートメーション)ツールの導入を先に検討する会社が多いのですが、順番としては、手作業で1シナリオを回してからのほうが失敗しません。ツールを入れても、シナリオと定義がなければ配信するものがありません。

状況 必要なもの
月のリードが数十件、シナリオが1本 表計算ソフトとメール配信ツールで足りる
リードの経路が3つ以上、シナリオを分けたい 配信の出し分けができるツールを検討する
サイト上の行動(料金ページ閲覧など)で引き上げたい 行動をトラッキングできるMAツールが要る
営業とリードの状態を同じ画面で見たい CRM・SFAとの連携を前提に選ぶ

導入を決める前に確認しておくことがもう1つあります。ツールを運用する担当者の時間が、月に何時間確保できるか。シナリオの作成、コンテンツの用意、配信結果の確認、営業との連携を含めると、最初の3か月は想定より時間がかかります。担当者が兼任で月数時間しか取れない状態で導入すると、契約だけが残ります。

続けるか、やめるかを決める指標

ナーチャリングは効果が出るまでに時間がかかるため、途中で「意味があるのか」という話になります。あらかじめ見る指標と判断の時期を決めておいてください。

  • 営業への引き渡し件数——月あたり何件を営業に渡せたか。最も直接的な指標です
  • 引き渡し後の商談化率——渡した件数のうち商談になった割合。低いなら「ホットの定義」を見直す
  • 「今ではない」の回収率——戻ってきたリードのうち、次の接触予定が入っている割合
  • リードの滞留期間——獲得から引き渡しまでの日数の中央値。伸び続けているなら、コンテンツがフェーズに合っていない

開封率やクリック率は、配信の改善には使えますが、続ける/やめるの判断材料にはしないでください。開封率が高くても営業に渡せていないなら、その配信は目的を果たしていません。

判断の時期については、当社が実務で見ている目安として、1シナリオを回し始めてから3か月目に引き渡し件数を、6か月目に商談化率を見るという置き方をしています。BtoBで検討期間が長い商材ほど、最初の3か月で受注まで見ようとすると判断を誤ります。

つまずく5つのパターン

よくある失敗と、その回避

  • 全員に同じメールを送る——温度で分けていないため、どちらの層にも刺さらない。まず経路で分ける
  • 自社の話しかしない——新機能やお知らせばかりの配信は開かれなくなる。読み手の課題から書く
  • 渡す基準がないまま営業に丸投げする——「全部見てください」は、結果的に何も見られない
  • ツールを入れて満足する——シナリオとコンテンツがなければ、配信するものがない
  • 短期で判断してやめる——検討期間より短いスパンで評価すると、動き始める前に止めることになる

5つ目は特に多いパターンです。半年から1年かけて検討される商材で、2か月で成果を問うのは設計として無理があります。始める前に、いつ何を見て判断するかを経営層と合意しておいてください。ここを決めずに始めると、必ず途中で止まります。

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LnXの見解

ナーチャリングの相談をいただくとき、最初にお聞きするのは施策の話ではなく、「営業と同じ言葉でリードを数えられていますか」という点です。マーケティング側が月100件と言い、営業側が「使えるのは5件」と言う。この状態でメール配信の設計を始めても、噛み合いません。定義を揃えるのは地味な作業ですが、ここを飛ばした施策はまず続きません。

もうひとつ、新しいコンテンツを作る前に、社内にあるものを使い切ってください。営業が商談で説明している内容、過去のセミナー録画、失注のときに言われた理由。これらはすべてナーチャリングの材料になります。新規制作から始めると立ち上がりが遅くなるうえ、現場の言葉が入らないぶん反応も鈍くなります。

LnXでは、マーケティング顧問として、リードの定義づくりと営業との連携ルールの設計から、月次でご一緒しています。代表自身が事業会社でマーケティングを担当してきた経験から、施策の巧拙よりも、社内で数字の見方が揃っているかどうかで結果が変わることを実感しています。ツールの導入可否を含め、いまの体制で何から着手すべきかの整理からご相談いただけます。

よくある質問

Q リードが月に数十件しかなくても、ナーチャリングは必要ですか?

むしろ件数が少ないときほど効きます。件数が少ないということは、1件あたりの獲得コストが高いということです。その状態で「今は検討していない」というリードを捨てていると、投じた費用を使い切れていません。数十件の規模であれば、ツールを入れずに表計算ソフトと個別メールで十分回せます。まずは経路で分けて、失注・保留を捨てないところから始めてください。

Q MAツールは最初から入れたほうが早いですか?

シナリオとコンテンツが1本もない状態で導入すると、配信するものがないまま契約だけが残ります。手作業で1シナリオを回してから検討するほうが、必要な機能もはっきりします。導入を検討する目安は、リードの経路が3つ以上あってシナリオを分けたいとき、またはサイト上の行動を見て引き上げたいときです。あわせて、運用に月何時間割けるかも先に確認してください。

Q メールはどのくらいの頻度で送るべきですか?

当社が実務で見ている目安としては、シナリオの初回は資料請求などの当日から翌日、以降は3日〜1週間おきが無理のないペースです。頻度そのものより、送る内容がフェーズに合っているかのほうが効きます。同じ内容を高頻度で送ると解除が増えるだけなので、送る材料が尽きたら頻度を落として、その間にコンテンツを用意するほうが健全です。

Q 展示会で交換した名刺に、そのままメールを送ってよいですか?

広告宣伝を目的とするメールは、特定電子メール法のオプトイン規制により、原則としてあらかじめ同意を得た相手にのみ送信できます。同意を証する記録の保存や、送信者名・受信拒否の通知先などの表示義務もあります。名刺交換の場やアンケートの段階で、配信に関する同意の項目を用意しておくのが安全です。自社の運用が要件を満たしているかどうかの個別の判断は、弁護士等の専門家にご確認ください。

Q 営業に渡す基準は、スコアリングで決めるべきですか?

最初は点数を使わないほうがうまくいきます。「料金ページを見た」「導入事例を2本以上読んだ」「セミナーで質問した」といった具体的な行動を3〜5個並べて、いずれかに該当したら渡す、という形で十分機能します。点数の設計に取りかかるのは、行動の種類が増えて手作業で追えなくなってからです。先に点数を作り込むと、その点数が妥当かどうかを検証する材料がありません。

Q 成果が出るまでどのくらいかかりますか?

商材の検討期間によりますが、当社では1シナリオを回し始めてから3か月目に営業への引き渡し件数を、6か月目に引き渡し後の商談化率を見る置き方をしています。BtoBで半年から1年かけて検討される商材の場合、最初の3か月で受注まで見ようとすると、動き始める前に止めることになります。始める前に、いつ何を見て判断するかを経営層と合意しておいてください。

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