この記事でわかること
- 専門知識がなくても提案書の質を判断できる読み方
- 契約前に気づける危険なサイン7つ
- 「良いレポート」と「数字を並べただけのレポート」の違い
- 担当者への質問で分かること
- 関係を壊さずに改善を引き出す伝え方
- 見切るべきタイミングの目安
提案書はどこを読むか
広告の専門知識がないと提案書の良し悪しは分からない、と思われがちですが、そんなことはありません。判断すべきは技術的な正しさではなく、「自社のことを理解しているか」と「説明する姿勢があるか」で、これは専門知識がなくても読み取れます。
読むべき3つの観点
- 固有名詞が入っているか——自社の商材名、競合名、具体的なキーワード、既存サイトの指摘が入っているか。どの会社にも使い回せる内容なら、自社を見ていない
- 「なぜ」が書かれているか——この媒体を選ぶ理由、この予算配分にする理由が説明されているか。施策の羅列だけの提案書は、後から相談しても理由を説明してもらえない
- うまくいかない場合の話があるか——想定どおりに進まなかったときに何を見直すかが書かれているか。成功前提の提案書は、実務経験の乏しさを示すことがある
ページ数と質は比例しない:50ページの提案書が、市場動向の一般論で40ページ使っていることは珍しくありません。自社について書かれているページが何ページあるかを数えてみると、実態が見えます。10ページの提案書でも、そのうち7ページが自社の話なら十分に濃い提案です。
契約前に気づける危険なサイン7つ
次のいずれかに当てはまる場合、契約前にもう一段階の確認をおすすめします。
成果を断定的に保証している
「CPA◯円を保証」「問い合わせ◯件を確約」といった表現です。広告の成果は競合状況や季節性に左右されるため、確約できる性質のものではありません。望ましいのは、前提を置いたうえでのレンジ提示と、その根拠の説明です。
断定は、達成できなかったときの説明を用意していないことが多いアカウントの所有権について曖昧にする
「弊社の管理アカウントで運用します」とだけ書かれ、自社名義にできるかどうかが明記されていないケースです。ここが曖昧なまま契約すると、解約時に運用データや設定が引き継げず、乗り換えの自由度を失います。書面での確認を求めてください。
解約時に何が残るかを、契約前に文書で確認する計測の話が一切出てこない
コンバージョンをどう計測するか、現在の計測が正しいかに触れていない提案は要注意です。計測が誤っていれば運用の判断も自動入札の学習もすべてずれます。まともな運用者であれば、最初に確認する項目です。
「現在の計測状況を確認させてください」と言う会社は信頼できるリンク先ページの話をしない
広告の成果は、配信設定と同じくらいリンク先ページで決まります。LPやサイトに一切触れず、配信の話だけで完結する提案は、成果への責任範囲を狭く見ている可能性があります。改修が必要なら、それを言える会社のほうが信頼できます。
「このLPだと厳しい」と率直に言える会社を評価する運用担当者が誰か分からない
営業担当と運用担当が別なのは普通ですが、誰が運用するのか、何アカウントを兼任しているのかを明かさない場合は確認が必要です。提案の場に運用担当が同席するかどうかも、体制を測る材料になります。
契約後に初めて担当を知る形は、期待値のズレが起きやすい解約条件の質問をはぐらかす
最低契約期間、解約の申し出期限、解約時の引き継ぎ範囲。これらは契約前に確認して当然の項目です。ここで話をそらす会社は、契約後のトラブル時にも同じ対応になると考えたほうが安全です。
気持ちよく答えてくれるかどうかが、そのまま姿勢の指標になるレポートのサンプルを見せない
守秘義務があるため実物そのままは出せませんが、マスキングしたサンプルや、フォーマットの説明はできるはずです。それすら出てこない場合、レポートの中身が薄い可能性があります。契約前に必ず見せてもらってください。
サンプルを見れば、数字の羅列か提案付きかがすぐ分かる月次レポートで運用の質を見極める
すでに契約している場合、運用の質はレポートに表れます。見るべきは数字そのものではなく、数字にどんな解釈が添えられているかです。
| 観点 | 質の低いレポート | 質の高いレポート |
|---|---|---|
| 数字の扱い | 指標が並んでいるだけ | 前月比の変化に理由が書かれている |
| 実施内容 | 「最適化を実施しました」 | 何をいつ変え、結果どうなったかが具体的 |
| next action | 「引き続き改善します」 | 来月試すことと、その判断基準が書かれている |
| 悪い数字の扱い | 触れない、または外部要因のせいにする | 原因の仮説と対処が書かれている |
| 事業との接続 | 広告の指標で完結している | 問い合わせ件数・商談化まで言及がある |
最も重要な突き合わせ:レポートに書かれたコンバージョン数と、社内で実際に受け取っている問い合わせ件数を突き合わせてください。ここが大きくずれている場合、計測に問題があるか、コンバージョンの定義が事業の成果と一致していません。数字が良くなっているのに問い合わせが増えないという相談の大半は、ここに原因があります。
「最適化を実施しました」で終わるレポート
この一文しか書かれていない場合、実際に何が行われたのかは分かりません。「入札を調整した」「除外キーワードを12件追加した」「クリエイティブを3本入れ替えた」といった具体が書かれているかを確認してください。書けないのは、実施していないか、報告する習慣がないかのどちらかです。
担当者に聞くと分かること
定例の場で次の質問をすると、運用の実態がかなり見えます。責める意図ではなく、状況を理解するための質問として聞いてください。
- 「先月、具体的に何を変えましたか」——変更内容を即答できるか
- 「今いちばんの課題は何だと考えていますか」——課題認識が自社と一致しているか
- 「来月試すことと、その判断基準を教えてください」——計画があるか
- 「うまくいっていない部分はどこですか」——悪い情報を出せる関係か
- 「弊社の問い合わせ件数と、レポートのCV数は合っていますか」——事業側の数字を見ているか
特に4つ目が重要です。良い報告しか上がってこない関係は、健全ではありません。広告運用は試行錯誤の連続なので、うまくいっていない部分が必ずあります。それを共有してもらえるかどうかが、改善の速さを決めます。
改善を引き出す伝え方
不満があるとき、いきなり解約をちらつかせるのは得策ではありません。多くの場合、期待値が共有されていないだけということもあります。
改善を求めるときの進め方
【伝え方】
- 指標ではなく事業の状況で伝える(採算が合わない、など)
- 許容できる水準を具体的な数字で示す
- いつまでに判断したいかを共有する
- 自社側でできること(素材提供・LP改修)も提示する
【合意すること】
- 次の1か月で試す施策を1〜2個に絞って決める
- その施策の成否をどう判断するかを決める
- 振り返りの日程をその場で押さえる
- 決めた内容を文面で残す
【並行してやること】
- 広告アカウントの閲覧権限を自社でも持つ
- 計測が正しいかを自社側でも確認する
- 問い合わせ件数を自社で記録し続ける
- 必要ならセカンドオピニオンを検討する
見切るタイミングの目安
改善を求めても状況が変わらない場合、判断が必要になります。次のいずれかが続くなら、検討する段階です。
- 改善の合意をしたのに、翌月のレポートに反映されていない——実行されていないか、優先度が低い
- 質問への回答が毎回抽象的で、具体が出てこない——実務が動いていない可能性がある
- 悪い数字について説明がなく、聞くと外部要因の話になる——改善の主体が自社側にない
- 担当者が短期間に何度も変わり、引き継ぎがされていない——検証が積み上がらない
ただし、乗り換える前に必ずアカウントの所有権と引き継げるものを確認してください。ここを確認せずに解約すると、これまで蓄積した設定や学習データを失い、新しい代理店がゼロから作り直すことになります。
Web広告運用代行
「レポートは届くが、良いのか悪いのか分からない」という状態のままでは判断できません。現在の管理画面とレポートを拝見し、何が改善余地で、何が問題ないのかを率直にお伝えします。セカンドオピニオンとしてのご相談も歓迎です。
広告運用代行の詳細を見るLnXの見解
セカンドオピニオンのご依頼をいただいて管理画面を拝見すると、「代理店が悪い」というより「期待値が共有されていない」ケースがかなりの割合を占めます。お客様は問い合わせ件数を見ていて、代理店はクリック単価を見ている。どちらも仕事はしているのに、話が噛み合わないまま数か月が過ぎている。この状態は、定例で見る数字を事業側の指標にそろえるだけで解消することがあります。
一方で、明確に運用が動いていないアカウントもあります。見分け方は単純で、変更履歴を見れば分かります。管理画面には設定変更の履歴が残るため、この数か月で何が触られたかは客観的に確認できます。レポートに「最適化を実施」と書かれているのに履歴がほとんど動いていないなら、そこは正直に判断すべき部分です。
私たちが提案の場で必ずお伝えしているのは、うまくいかない可能性とそのときの対処です。広告は数か月かけて検証を積む仕事なので、初月から思いどおりになることのほうが少ない。だからこそ、想定外が起きたときに何を見直すかを先に共有しておくほうが、結果的に信頼関係は続きます。アカウントはお客様名義での運用に対応しており、万一合わなかった場合も資産が残る形にしています。比較検討やセカンドオピニオンの段階でも、お気軽に声をかけてください。
よくある質問
Q 専門知識がなくても、提案書の良し悪しは判断できますか?
できます。広告の専門用語が正しいかを判断するのは難しくても、「自社について具体的に書かれているか」「なぜそうするのかの理由が書かれているか」「うまくいかなかった場合の話があるか」は専門知識なしで読み取れます。むしろ専門用語が多くて何をするのか分からない提案書は、説明の姿勢そのものに課題があると考えてよいと思います。
Q レポートで数字が良くなっているのに、問い合わせが増えません。
レポート上の指標と、事業の成果がずれている可能性が高い状態です。クリック率やインプレッション数が改善していても、コンバージョンの定義が実際の問い合わせと一致していなければ、事業への影響は出ません。まずレポートに書かれているコンバージョン数と、社内で受け取っている問い合わせ件数を突き合わせてください。ここが合っていないなら、計測から見直す必要があります。
Q 担当者がよく変わるのは問題ですか?
交代自体は起こり得ることですが、引き継ぎの質は確認すべきです。過去の検証履歴や、なぜ今の設定になっているかが引き継がれていないと、新しい担当者が同じ検証を繰り返すことになります。交代の連絡があったら、引き継ぎ資料の有無と、これまでの検証内容を新担当が把握しているかを一度確認してください。
Q 改善を求めたいのですが、伝え方が難しいです。
数字ではなく事業の状況で伝えるのが有効です。「CPAを下げてほしい」ではなく「今の単価だと採算が合わないので、いくらまでなら成立する」と伝えると、相手も判断しやすくなります。加えて、次の1か月で何を試すのかを一緒に決め、いつ振り返るかまで合意しておくと、次回の面談が具体的になります。
Q セカンドオピニオンを取るのは失礼にあたりませんか?
広告運用は成果に幅が出やすい領域なので、第三者の目を入れること自体は珍しくありません。現在の代理店に伝える義務もありません。ただし管理画面の閲覧権限を第三者に渡す場合は、契約上の制約がないかだけ確認しておくと安心です。判断材料を増やしたうえで、続けるか変えるかを決めてください。