この記事でわかること
- 「問い合わせが少ない」だけでは、LPを直すのかフォームを直すのか決まらない理由
- フォームを4段階(表示・入力開始・エラー・送信完了)に分けて見る方法
- GA4の拡張計測機能で自動的に取れる範囲と、取れないケース
- GTMで項目別の離脱とバリデーションエラーをイベント化する5ステップ
- GA4の探索レポートで離脱地点を読み取る手順
- 現場でよく起きる計測ミス5つと、その見つけ方
「問い合わせが少ない」では打ち手が決まらない
広告→LP→フォームという導線で問い合わせが伸びないとき、社内の議論はたいてい2つに割れます。ファーストビューを変えるべきだ、いやフォームの項目が多すぎる——どちらも正しそうに聞こえますが、判断材料がないまま選ぶと半分は外れます。
外れる理由は単純で、フォームの内側が計測されていないからです。GA4に入っている数字が「フォームページの表示回数」と「問い合わせ完了数」の2点だけだと、その間で何が起きたかは推測するしかありません。フォームの中を通過点に分けて計測すると、直すべき場所が1つに絞れます。
最低限、フォーム表示/入力開始/エラー発生/送信完了の4段階に分けてください。この4つが取れているだけで、LPの問題なのか、フォームの構造の問題なのか、入力ルールの問題なのかが切り分けられます。項目単位の細かい計測は、そのあとで足せば十分です。
フォームは4段階に分けて見る
4段階それぞれで落ちている場合、疑うべきものと打ち手が変わります。数字を見る前に、この対応表を先に作っておくと、レポートを見た瞬間に次の動きが決まります。
| 段階 | 落ちている場合の解釈 | 打ち手の方向 |
|---|---|---|
| 1. フォーム表示 | そもそもフォームまで到達していない | 広告とLPの整合、CTAの位置と文言、ページ速度 |
| 2. 入力開始 | フォームは見たが、書き始める前に離れている | 項目数の見た目の圧、必須の多さ、入力前の不安(費用・営業連絡の有無) |
| 3. エラー発生 | 書き始めたが、入力ルールで弾かれている | バリデーションの緩和、エラー文言、入力補助(自動整形・郵便番号検索) |
| 4. 送信完了 | 最後まで書いたのに送信されていない | 送信ボタンの分かりにくさ、確認画面での離脱、送信エラー・二重送信 |
「入力開始が少ない」はフォームではなく手前の問題
フォームを見たのに1文字も入力せずに離れている場合、原因はフォームの使いやすさではありません。見た瞬間に「重そう」と感じたか、送ったあと何が起きるか分からなくて止まったかのどちらかです。前者は項目数を減らす、あるいは第1画面に必須項目だけを見せる。後者はフォームの上に「ご返信は翌営業日まで/しつこい営業はしません」といった一文を置く。どちらも入力開始率で効果が測れます。
GA4の拡張計測機能で取れる範囲と限界
GA4には拡張計測機能という仕組みがあり、その中の「フォームの操作」をオンにすると、フォームへの入力開始(form_start)と送信(form_submit)がタグの追加なしに収集されます(出典:拡張計測機能イベント|アナリティクス ヘルプ)。まずはここをオンにして、全体の通過率を把握するのが最短です。
ただし、この自動収集には実務上の制約があります。思っていた数字と違う、という相談の多くはここに原因があります。
同じページに複数のフォームがあると混ざる
サイドバーの資料請求と、本文下の問い合わせが1つの数字に合算されます。イベントにはフォームのIDや送信先を示すパラメータが付くので、まずはそれで分けられるかを確認してください。HTML側にIDが振られていない場合は分離できないため、GTMから任意の名前を送る設計に切り替えます。
JavaScriptで送信を横取りするフォームでは発火しないことがある
標準の送信処理を使わず、JavaScript側で通信して完了メッセージを出す実装は珍しくありません。この場合、送信のイベントが取れないまま「入力開始だけが立って完了がゼロ」という状態になります。フォームツールやCMSのプラグインを使っている場合は、必ずテスト送信で発火を確認してください。
テスト送信→リアルタイムレポートで発火を目視確認する別ドメインの埋め込みフォームは計測が切れる
外部サービスのフォームをiframeで埋め込んでいる場合、内部の操作は自社のタグからは見えません。埋め込み枠が表示されたところまでしか取れないため、離脱の内訳は外部サービス側の管理画面で見ることになります。どこまで自社で計測できるかは、実装方式を確認したうえで決めてください。
エラーと項目単位の離脱は取れない
自動収集で分かるのは「始まった」「送られた」の2点だけです。どの項目で止まったのか、どんなエラーが出たのかは対象外なので、改善の打ち手を決めるにはここを自分で足す必要があります。次の章の手順がこれにあたります。
GTMで項目別の離脱を取る5ステップ
自動収集の上に、項目単位の情報を足します。いきなり全項目を対象にせず、離脱が疑われる3〜5項目に絞って始めるのが現実的です。設定が増えるほど、壊れたときに気づきにくくなります。
送るイベント名とパラメータを先に決める
実装に入る前に紙の上で決めます。たとえばイベント名を form_field_blur とし、パラメータに「フォーム名」「項目名」「入力の有無」を持たせる、という具合です。ここを決めずに手を動かすと、項目ごとに別のイベント名が乱立して、あとから集計できなくなります。命名のルールは計測設計書に残してください。
イベント名は英小文字とアンダースコアで統一し、日本語は値側に入れる項目から離れた瞬間をトリガーにする
入力欄からフォーカスが外れたタイミングを拾い、そのとき値が空かどうかを一緒に送ります。「触ったのに空のまま次へ進んだ項目」が、離脱の手前で起きていることの大半を説明します。GTMではカスタムHTMLタグでイベントリスナーを仕込み、データレイヤーに押し込む形が扱いやすくなります。
エラー表示をイベント化する
エラーメッセージが画面に出た瞬間を検知し、どの項目でどの種類のエラーが出たかを送ります。入力内容そのものは絶対に送らないでください。送るのは項目名とエラーの種類だけです。氏名やメールアドレスを値に含めると、解析ツールに個人情報を渡すことになります。
入力値をパラメータに載せない。送るのは項目名とエラー種別のみGA4イベントタグを作り、パラメータを渡す
データレイヤーの値をGTMの変数に登録し、GA4イベントタグのパラメータに割り当てます。タグは項目ごとに作らず、1つのタグにパラメータで差を持たせるのが管理上ラクです。プレビューモードで、意図した値が入っていることを1項目ずつ確認します。
カスタムディメンションに登録する
GA4の管理画面でカスタムディメンションを作らないと、送ったパラメータはレポートで分解できません。「送っているのにレポートに出てこない」という相談の多くが、この登録漏れです。登録した日から集計が始まり、過去に遡っては見られない点にも注意してください。
登録後すぐに数字が出なくても正常。反映まで時間がかかる設定を入れたら、必ず自分でテスト送信をしてください。プレビューモードでの確認と、本番公開後のリアルタイムレポートでの確認は別物です。そしてテスト送信が本番のコンバージョン数に混ざらないよう、社内IPの除外か、テスト用の値でフィルタできる設計にしておきます。
効き目が大きいのはエラーの計測
4段階のうち、改善が数字に直結しやすいのがエラーです。入力する意思はあるのに、システム側の都合で弾かれている状態だからです。よくあるものを挙げます。
| よくあるエラー | 起きていること | 対処の方向 |
|---|---|---|
| 電話番号のハイフン | ハイフンありで弾かれる/なしで弾かれる | 両方を受け付け、送信時に自動整形する |
| 全角・半角の指定 | 半角指定の欄に全角で入力して弾かれる | 入力時に自動変換する。指定自体をやめる |
| 必須項目の見落とし | スクロールの外にある必須欄に気づいていない | エラー箇所へ自動スクロール、色と文言を強める |
| 郵便番号・住所 | 形式が合わず、入力し直しで力尽きる | 郵便番号からの自動入力を入れる。任意項目にする |
| 確認用メールアドレス | コピー禁止の実装で、再入力が合わない | 確認欄をやめる。もしくは入力済みの値と照合表示する |
エラーの件数と種類が取れていれば、この表のどれを先に直すかを推測ではなく実績で決められます。逆に取れていないと、社内で声の大きい意見が優先され、直したのに数字が動かないという結果になりがちです。
GA4の探索で離脱地点を読む
イベントが溜まったら、探索レポートで形にします。標準レポートだけを見ていると、イベント数の一覧は出ても「どこで落ちたか」の形にはなりません。
作るのはこの2つで足ります
【1】目標到達プロセスデータ探索
- ステップを「フォーム表示 → 入力開始 → 送信完了」の3つで作る
- 内訳ディメンションに「デバイスカテゴリ」を入れ、スマホとPCの通過率を分ける
- 広告の影響を見るなら、セグメントで参照元/メディアを絞る
【2】自由形式(項目別の離脱・エラー)
- 行に「項目名」、値に「イベント数」を置く
- 空のまま離れた回数と、エラーの発生回数を並べて比較する
- 上位3項目だけを改善対象として、次の施策に落とす
見るときの注意が1つあります。件数が少ない期間の数字は、傾向としては読めません。フォーム表示が月に数十件という規模なら、上下は誤差の範囲です。その場合は数字を追うより、自分でスマホから複数パターンを入力してみるほうが早く原因に届きます。
よくある計測ミス5つ
送信完了がページ遷移で取れていない
サンクスページに遷移せず、同じURLで完了メッセージを出す実装では、ページビューベースの計測が働きません。完了だけがゼロなのに入力開始は立っている、という状態がサインです。送信完了時にカスタムイベントを発火させ、それをキーイベントとして登録してください。
バリデーション失敗時にも送信イベントが立っている
送信ボタンのクリックをそのまま完了として扱っていると、エラーで戻された分まで完了に数えられます。管理画面のCV数と、実際に届いたメールの件数が合わない場合はまずここを疑ってください。完了の判定は、ボタンのクリックではなく処理の成功側に置きます。
CV数と受信メール件数を月1回突き合わせるパラメータを送っているのに登録していない
GTMからは正しく送られているのに、GA4側でカスタムディメンションに登録していないため、レポートで分解できないケースです。「(not set)」ばかりが並ぶ場合は、登録漏れか、登録前の期間を見ている可能性があります。登録した日より前のデータは遡って分解できません。
同意設定や広告ブロックで対象が減っている
同意管理ツールを入れている場合、同意前の操作は計測対象から外れます。フォーム表示だけが極端に少ない、あるいは特定ブラウザで数字が欠ける場合は、タグの発火条件と同意の設定を確認してください。設計そのものは必要なものなので、数字が減ること自体は異常ではありません。前提として把握しておくのが重要です。
テスト送信が本番データに混ざっている
設定確認のたびに送ったテストが、そのままコンバージョンとして積み上がります。件数の少ないアカウントほど影響が大きく、広告の自動入札にも誤った学習データを渡すことになります。社内IPの除外を先に設定し、テストの記録は日付を残しておいてください。
計測を触る前に、社内IP除外とテスト記録の運用を決めておくLnXの見解
フォームの計測は、入れた瞬間に結論が出る類の施策ではありません。効いてくるのは、改善の議論から「たぶん」が消えるという点です。フォームが長いから直そう、という会話が、住所の入力で3割落ちているから住所を後ろに回そう、という会話に変わります。打ち手の大きさは変わらなくても、外れる回数が減ります。
もうひとつ、広告を配信している会社にとっては、この計測が入っているかどうかで「広告の問題なのか、受け皿の問題なのか」の切り分けが一段速くなります。フォーム表示までは来ているのに入力開始が少ないならLPとフォームの接続、入力開始から送信までが落ちているならフォーム自体、そもそも表示が少ないなら広告側、と判断できます。切り分けができていないまま入札やクリエイティブだけを触っても、動く幅は限られます。
当社が広告運用をお預かりする場合、配信の前にこの計測が入っているかを必ず確認します。数字が取れていない状態の改善提案は、結局のところ経験則の押し付けになるからです。LnXでは、広告の配信設計からGA4・GTMの計測、フォームや導線の改善までを同じ担当がまとめて見ています。計測が今どうなっているか分からない、という状態からのご相談で構いません。
よくある質問
Q 拡張計測機能の「フォームの操作」をオンにするだけで足りますか?
入口としては十分ですが、改善の打ち手を決めるには足りません。自動収集で分かるのは入力が始まったことと送信されたことまでで、どの項目で止まったか、どんなエラーが出たかは取れないためです。まず拡張計測機能をオンにして全体の通過率を把握し、落ち幅が大きいことが分かってから、項目単位の計測をGTMで足すという順番が現実的です。
Q フォームが1ページに複数ある場合はどう区別しますか?
自動収集されるイベントにはフォームのIDや送信先を示すパラメータが含まれるため、まずはそれで分かれるかを確認します。分かれない、あるいはIDが設定されていない場合は、フォームごとに任意の名前を付けたパラメータをGTMから送るのが確実です。サイドバーの簡易フォームと本番の問い合わせフォームが同じ数字に混ざると、通過率の解釈を誤ります。
Q イベントの値はどのくらいで信用してよいですか?
1日あたりの発生件数が少ないうちは、傾向の判断には使えません。フォーム表示が月に数十件という規模なら、数字の上下は誤差の範囲に収まります。この場合は数値の推移を追うより、実際に自分で複数のパターンを入力してみて、どこでエラーが出るかを手で確かめるほうが早く原因に届きます。
Q フォームを短くすれば離脱は減りますか?
項目を減らせば入力の負担は下がりますが、営業側で必要な情報まで削ると、問い合わせは増えても商談化率が落ちます。計測を入れる目的は、削る項目を感覚ではなく離脱の実績で選べるようにすることです。離脱の多い項目が営業上も必須なら、削るのではなく入力補助や説明の追加で対処するという判断になります。
Q サンクスページがなく、同じURLで完了メッセージが出る形でも計測できますか?
できます。送信完了時にGTMのカスタムイベントを発火させ、それをキーイベントとして登録します。ページ遷移がない分、設定を入れ忘れると完了だけが取れていない状態になりやすいので、実際にテスト送信をしてリアルタイムレポートで発火を確認してください。
Q 計測を入れると個人情報の取り扱いで注意することはありますか?
入力内容そのものをイベントのパラメータとして送らないことが基本です。氏名やメールアドレスを値に含めると、解析ツール側に個人情報を送ることになります。送るのは項目名、エラーの種類、発生回数といったメタ情報だけにしてください。取得と利用の告知については、プライバシーポリシーの記載範囲に収まっているかを社内で確認しておくと安全です。