この記事でわかること

  • ギフティング・PR投稿・アンバサダーの違いと使い分け
  • ステマ規制で責任を負うのは誰か(消費者庁Q&Aの整理)
  • 判断に迷いやすいケースの考え方
  • 起用の進め方6ステップと、契約で決めるべき条件
  • 効果の測り方と、投稿を二次利用するときの注意点

ギフティング・PR投稿・アンバサダーの違い

インフルエンサーの起用は、報酬の有無と関与の深さで呼び方が変わります。ただし実務で重要なのは呼び名ではなく、「事業者が投稿の内容決定にどこまで関与しているか」です。ここが後述する表示ルールの分かれ目になります。

形態 やりとりの内容 実務上の位置づけ
ギフティング 商品を無償提供し、投稿を依頼する(金銭報酬なし) 費用は抑えられるが、投稿されない・意図と違う投稿になるリスクがある
PR投稿(スポット) 報酬を支払い、指定の期間・本数で投稿してもらう 本数と時期をコントロールできる。単発で終わりやすい
アンバサダー契約 一定期間、継続的に発信してもらう 関係性が伝わりやすい。人選のミスマッチが起きたときの影響も大きい
UGC活用 顧客が自発的に投稿したものを、許諾を得て二次利用する コストは低いが、量と時期をコントロールできない

「無償だから広告ではない」という理解は危険です。消費者庁のステルスマーケティングに関するQ&Aでは、特定のインフルエンサーを選んで商品を無償提供する場合、やりとりの内容・提供の目的・取引関係の有無などの個別事情によっては、その投稿が「事業者の表示」に当たると判断される場合があると説明されています。金銭のやりとりの有無だけで線を引くことはできません。

ステマ規制で責任を負うのは「広告主」

いわゆるステマ規制は、景品表示法上の不当表示のひとつとして令和5年(2023年)10月1日から施行されています。中小企業が押さえておくべき点は次の3つです。

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規制の対象になるのは、依頼した側(広告主)

消費者庁のQ&Aでは、規制対象となるのは「自己の供給する商品又は役務の取引に関する表示について、その内容の決定に関与した事業者(いわゆる広告主)」だと明示されています。広告主から依頼を受けて投稿するインフルエンサーやアフィリエイターは、原則として規制の対象外です。

「インフルエンサーが表記を忘れた」は、依頼した側の言い訳にならない
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違反した場合は措置命令(行政処分)の対象

Q&Aによれば、違反行為が認められた場合、消費者庁は誤認の排除・再発防止策の実施などを命ずる措置命令を行います。ステマ告示違反そのものは課徴金納付命令の対象にはならないとされていますが、内容に優良誤認・有利誤認が含まれる場合は課徴金の対象になり得ると説明されています。また、違反が認められない場合でもおそれがあれば指導(行政指導)が行われます。

措置命令は公表される。金額以上に、信用への影響が大きい
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「明瞭に分かる」かどうかが判断基準

Q&Aでは、「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」といった用語を記載する方法のほか、「A社から商品の提供を受けて投稿している」といった文章で記載する方法も適切な対応として示されています。用語が限定されているわけではなく、表示全体から一般消費者にとって事業者の表示だと明瞭に分かるかどうかで判断されます。

形式的にタグを付ければ済む話ではなく、気づける形かどうかで見られる

実務で判断に迷いやすいケース

消費者庁のQ&Aには、現場で判断に迷いやすい具体例が並んでいます。代表的なものを整理します。

ケース Q&Aで示されている考え方
本文ではなくツリー(リプライ)に「広告」と書く 一般消費者が気づかないおそれがあり、明瞭とはいえない場合が多いとされています
動画の冒頭にだけ「広告」と表示する 途中から視聴する人が見逃すおそれがあるため、画面上に常に表示するなど動画全体を通して明瞭にしておくことが望ましいとされています
自社サイトに「お客様の声」として掲載する 依頼したインフルエンサーの投稿を「お客様の声」として掲載することは適当ではなく、自社が依頼した投稿だと明瞭に分かる形で表示する必要があるとされています
アンケート回答の一部を引用する 恣意的に抽出せず内容を変えずに引用する場合は事業者の表示に当たらないが、好意的な評価だけを選んで引用する場合は事業者の表示に当たると考えられるとされています
従業員が個人アカウントで自社商品を紹介する それだけで直ちに違反となるわけではないものの、販売促進が求められる地位・立場にある者の投稿は事業者の表示に当たると考えられるとされています

過去の投稿もそのままにはできません。Q&Aでは、施行日より前に行われた「事業者の表示」に当たる投稿が施行後も継続して表示されている場合、明瞭になっていなければ行政処分の対象となる可能性があると説明されています。過去にPR投稿を依頼したことがある企業は、いま残っている投稿の状態を一度確認しておくことをお勧めします。

※本記事は消費者庁が公表しているステルスマーケティングに関するQ&Aおよび運用基準の記述をもとに整理したものです。個別の表示が違反に当たるかどうかは事案ごとの判断になります。具体的な案件については、消費者庁の相談窓口や弁護士など専門家にご確認ください。

起用の進め方6ステップ

1. 目的と評価指標を決める

認知を広げたいのか、指名検索を増やしたいのか、直接の購入・問い合わせを取りたいのか。目的によって選ぶ人も、依頼する内容も、見るべき数字も変わります。「バズらせたい」は目的になりません。

2. フォロワー数ではなく、読者層と反応で選ぶ

フォロワーが多くても、自社の商圏や客層と重なっていなければ意味がありません。確認すべきは、投稿への反応の内容(コメントの質)、直近の投稿頻度、過去のPR投稿の量と質、そして自社商材と競合する案件を同時期に受けていないかです。フォロワー数の伸び方が不自然でないかも見ておきます。

3. 商品理解の時間をつくる

PR投稿が刺さらない最大の原因は、投稿者が商品を分かっていないことです。使い方や想定シーン、他社との違い、言ってはいけないことを、資料と実物で共有します。ここを省くと、当たり障りのない紹介文になって数字も動きません。

4. ブリーフ(依頼書)と契約で条件を明文化する

口頭やDMのやりとりだけで進めると、表示の抜けや納期の認識違いが起きます。次項のチェックリストの内容を1枚の依頼書にまとめ、契約書または発注書に紐づけてください。

5. 投稿前に確認する

投稿内容の事前確認は、表示の抜けと、薬機法・景品表示法上リスクのある表現を止めるために必要です。ただし過度に文面を作り込むと、投稿者らしさが消えて反応も落ちます。「事実関係の誤り」「法令上使えない表現」「表示の有無」の3点に絞って確認するのが現実的なバランスです。

6. 投稿後の状態を記録する

投稿URL、掲載日、表示の記載箇所、契約期間、二次利用の可否をセットで記録します。数年後に「あの投稿は依頼したものだったか」が分からなくなるのが、いちばん危険な状態です。

依頼時に渡す情報と、契約で決めること

インフルエンサー起用チェックリスト

【ブリーフに書くこと】

  • 商品・サービスの概要と、伝えてほしい価値(3点まで)
  • ターゲット像と、想定している利用シーン
  • 使ってはいけない表現・言い切ってはいけない効果
  • 投稿してほしい媒体・形式・本数・時期
  • 「広告」等の表示を、本文のどこに入れるかの指定
  • 誘導先のURLと、計測用パラメータの有無

【契約・発注書で決めること】

  • 報酬または提供物の内容と、支払い条件
  • 投稿の掲載期間(いつまで残すか、削除の可否)
  • 二次利用の範囲(自社サイト・広告クリエイティブへの転用可否と期間)
  • 競合案件を受けない期間があるかどうか
  • 表示義務を守らなかった場合の対応(修正依頼・報酬の扱い)
  • 炎上・トラブルが起きた場合の連絡フローと窓口

【社内で整えること】

  • 誰が最終確認するかを決めている(担当者ひとりに委ねない)
  • 依頼した投稿の一覧を管理している(URL・掲載日・表示箇所)
  • 過去に依頼した投稿で、表示が漏れているものがないか確認した
  • 従業員が個人アカウントで自社商品に触れる際のルールを共有している

効果の測り方と、投稿の二次利用

数字は「投稿の数字」と「自社の数字」を分けて見る

インプレッションや保存数は投稿側の指標であり、それ自体は売上ではありません。自社側では、実施期間中の指名検索数、サイトの直接流入、プロフィールリンクからの遷移、問い合わせ件数を並べて見ます。専用のURLやクーポンコードを用意しておくと、経路を分けて確認できます。

単発では効果を判断しきれません。1本のPR投稿で問い合わせが増えるのは、もともと検討していた層が背中を押されたケースがほとんどです。認知目的で起用するなら、数か月にわたって複数人・複数回で実施し、指名検索と直接流入の推移で判断するほうが実態に合います。

良かった投稿は、広告クリエイティブに回す

反応の良かった投稿は、そのまま眠らせるのではなく広告のクリエイティブやLPの素材として二次利用すると投資効率が上がります。ただし二次利用には、契約での許諾範囲の合意が前提です。また自社サイトに転載する場合、依頼した投稿を「お客様の声」として扱うことは適当ではないとされている点に注意してください。自社が依頼した投稿であることが分かる形で掲載します。

やってはいけない依頼

  • 「PR表記は入れないでほしい」と依頼する——規制の趣旨に真っ向から反します
  • 高評価のレビューや星の数を条件にする——投稿内容を事業者が決定していると判断され得ます
  • 効果を断定する表現を指定する——商材によっては薬機法・景品表示法上の問題が重なります
  • 好意的な部分だけを切り取って自社サイトに掲載する——恣意的な抽出は事業者の表示に当たると考えられます

SNS運用のご相談

インフルエンサー施策も、その先の導線まで含めてご相談ください
SNS運用について相談する

LnXの見解

インフルエンサー施策のご相談で最初にお聞きするのは、「この施策で何が増えてほしいですか」という点です。ここが「認知」で止まっていると、実施後に評価ができず、続けるかどうかの判断もできません。指名検索の数なのか、プロフィールからの遷移なのか、問い合わせなのか。先に見る数字を1つ決めておくだけで、施策の設計も人選も変わります。

そしてもう一つ、実務で強調しておきたいのが表示の管理です。規制の対象になるのは依頼した側であり、「インフルエンサーが付け忘れた」は説明になりません。とはいえ現場では、担当者ひとりがDMでやりとりして進めてしまい、記録が残らないことが本当に多い。依頼したものの一覧を持っているかどうかで、いざというときに動けるかが決まります。難しい仕組みは要りません。投稿URL・掲載日・表示箇所・二次利用の可否を並べた表があれば十分です。

LnXでは、SNSの発信そのものだけでなく、そこから問い合わせに至るまでの導線をまとめて見ています。投稿が伸びてもプロフィールから先が用意されていなければ数字は動きませんし、逆に導線が整っていれば小規模な起用でも成果につながります。SNSは単体で完結する施策ではなく、サイト・広告・問い合わせ対応と地続きのものです。どこから手をつけるべきか迷っている段階でも、状況を伺えば優先順位はお出しできます。

よくある質問

Q 商品を無償で送るだけなら、PR表記は不要ですか?

不要とは言い切れません。消費者庁のQ&Aでは、特定のインフルエンサーを選定して商品を無償提供する場合、やりとりの内容や提供の目的、取引関係の有無などの個別事情によっては、投稿者の自主的な意思による表示とは認められず「事業者の表示」に当たると判断される場合があると説明されています。一方、街頭で不特定多数に試供品を配って感想投稿を呼びかけるようなケースは、通常は事業者の表示に当たらないとされています。関係性の濃さで判断が変わるとお考えください。

Q 「#PR」以外の書き方でもよいのでしょうか?

よいとされています。Q&Aでは、「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」以外の用語を記載する方法が禁止されているわけではなく、「A社から商品の提供を受けて投稿している」といった文章で記載する方法も適切な対応として示されています。重要なのは用語そのものではなく、表示全体から一般消費者にとって事業者の表示だと明瞭に分かるかどうかです。

Q インフルエンサーが表記を忘れて投稿してしまいました。誰の責任になりますか?

規制対象となるのは、表示内容の決定に関与した事業者(広告主)です。依頼を受けて投稿したインフルエンサー側は原則として規制の対象外とされています。したがって、表記漏れに気づいた時点で速やかに修正を依頼し、対応の記録を残すのは依頼した側の責任になります。契約時に、表記が漏れた場合の対応手順まで決めておくことをお勧めします。

Q 数年前に依頼したPR投稿が残っています。いま対応が必要ですか?

確認しておくことをお勧めします。Q&Aでは、施行日(令和5年10月1日)より前に行われた「事業者の表示」に当たる投稿が施行後も継続して表示されている場合、事業者の表示であることが明瞭になっていなければ行政処分の対象となる可能性があると説明されています。過去の依頼分を洗い出し、表示が入っていないものについては投稿者に協力を依頼してください。

Q フォロワーが多い人に頼めば成果は出ますか?

フォロワー数と成果は比例しません。自社の商圏・客層と読者層が重なっているか、投稿への反応が実際の関心を示しているか、直近でどのくらいPR案件を受けているかのほうが影響します。特に地域商材の場合は、フォロワー数千人規模でも商圏が一致している方のほうが問い合わせにつながることが少なくありません。

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