この記事でわかること

  • 医療機関のWeb集客が他業種と決定的に違う点
  • 医療広告ガイドラインで「広告」に当たる条件と、禁止される5類型
  • ウェブサイトで詳しく書ける「限定解除」の考え方
  • MEO・自然検索・広告・SNS・口コミのチャネル別の使い分け
  • 違反になりやすい表現と、言い換えの方向
  • 新患数につなげるための指標と、90日の進め方

医療機関のWeb集客は、規制を前提に設計する

クリニックや歯科医院のWeb集客が他業種と違うのは、「効果を訴えて選んでもらう」という一般的な広告の型がそもそも使えない点です。他業種で成果を出してきた代理店や制作会社の型をそのまま持ち込むと、集患以前に表示の適法性で問題になります。

根拠となるのは、医療法と、それを具体化した厚生労働省の医療広告ガイドラインです。指針は継続的に改正されており、直近では令和8年(2026年)3月30日付けの最終改正版が公表されています。ここでは実務で判断が必要になる部分に絞って整理しますが、個別の表現の可否は必ず最新の指針本文とQ&A、事例解説書で確認してください。

規制対象は医療機関だけではありません。指針では、医師や医療機関のほか、広告代理店やアフィリエイター、さらには一般人も規制の対象になり得るとされています。制作や運用を外部に任せていても、依頼主である医療機関の責任が消えるわけではありません。

何が「広告」になり、何が禁止されるか

まず、どこからが規制対象の広告かを押さえます。指針では、次の3つをすべて満たす場合に医療広告に当たるとされています。

  1. 誘引性:患者の受診等を誘引する意図があること
  2. 特定性:医師の氏名や医療機関の名称が特定できること
  3. 内容:医業・歯科医業、または病院・診療所に関する内容であること

「これは広告ではありません」と書いても、住所や電話番号から医療機関が特定できるなら広告として扱われます。逆に、次のものは通常、広告とは見なされません。

  • 院内の掲示や、院内で配布するパンフレット(受け手が既に受診している患者に限られるため)
  • 職員の採用を目的とした求人広告(受診を誘引するものではないため)
  • 学術論文や学会発表

そのうえで、次の5類型が禁止されています。

類型内容具体例(指針より)
虚偽広告内容が虚偽のもの。罰則付きで禁止「絶対安全な手術です!」「厚生労働省の認可した○○専門医」、加工・修正した術前術後の写真
比較優良広告他院と比較して優良である旨「日本一」「No.1」「最高」、「県内一の医師数」、著名人の推薦
誇大広告事実を不当に誇張し、誤認させるもの「比較的安全な手術です」、活動実態のない団体による「○○学会認定医」
公序良俗に反する広告わいせつ・残虐・差別的な表現
体験談・術前術後写真患者の主観や伝聞に基づく治療内容・効果の体験談、誤認させるおそれのあるビフォーアフター写真説明を伴わない術前術後の写真のみの掲載

「品位を損ねる広告」も慎むべきとされています。指針では、費用を強調した広告として「今なら○円でキャンペーン実施中!」「期間限定で○○療法を50%オフ」「○○治療し放題プラン」、また「無料相談をされた方全員に○○をプレゼント」といった、提供される医療の内容と直接関係のない誘引が例示されています。他業種のLPで定番の訴求が、そのまま使えないことになります。

ウェブサイトで詳しく書ける「限定解除」

医療広告は、原則として法令で定められた事項しか広告できません。ただしそれをウェブサイトにもそのまま当てはめると、患者が求める詳しい情報が提供できなくなるため、一定の条件を満たす場合に広告可能事項の限定を解除する仕組みが用意されています。

実務上のポイントは次の2点です。

  • 患者が自ら求めて入手する情報であること:自院サイトのように、患者が検索して訪れるページが想定されています。バナー広告やリスティング広告は、この要件を満たさないと整理されており、限定解除の対象外です
  • 自由診療については、通常必要とされる治療内容・費用等と、主なリスク・副作用等の情報提供が必要:しかもその説明は、利点と比べて極端に小さい文字にしたり、リンク先の別ページに逃がしたりしてはならないとされています

ここが設計上の分岐点になります。自由診療の詳細やビフォーアフターを見せられるのは自院サイト側であって、広告のクリエイティブ側ではありません。したがって医療機関のWeb集客は、「広告で詳しく訴求する」のではなく「広告は入口に徹し、自院サイトで説明を尽くす」という構造になります。

マーケティング顧問制度

規制を踏まえたうえで、どこから手をつけるかの優先順位を一緒に整理します
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チャネル別の考え方

上の構造を踏まえると、各チャネルの役割は次のように整理できます。

1

MEO(Googleビジネスプロフィール)

「地域名+診療科」で探す患者にとって、最初の接点になります。診療時間・休診日・アクセス・写真・予約リンクの整備は、費用がかからず効果が読みやすいため、多くの院で最優先になります。掲載する内容も医療広告に当たり得るため、記載事項は自院サイトと揃えてください。

  • 診療時間と臨時休診の反映を、院内の運用フローに組み込む
  • 院内の写真・外観・駐車場など、来院前の不安を消す情報を優先する
2

自院サイト・コンテンツ

限定解除の要件を満たせば、診療内容・費用・リスクまで詳しく書ける唯一の場所です。症状名で検索する患者に向けた解説ページを整えることが、そのまま集患と説明責任の両方を満たします。医師名・経歴・所属学会など、書き手が誰かを明示することも重要です。

3

リスティング・ディスプレイ広告

限定解除の対象外である前提で、広告文は広告可能事項の範囲に収めます。効果や体験談を書かず、診療科・診療時間・アクセス・予約の有無といった事実情報が中心になります。訴求で差をつけにくいぶん、着地先のページと予約導線の作り込みが成果を分けます。

4

SNS

医療機関名が特定でき、受診を誘引する意図があれば、SNSの投稿も広告として扱われ得ます。症例写真や患者の声をそのまま投稿する運用は、規制上のリスクが高くなります。院内の様子、設備、スタッフ紹介、受診の流れといった、事実情報を中心に据える運用が現実的です。

5

口コミ・第三者サイト

指針では、個人のウェブサイトやSNSの個人ページ、第三者の口コミサイトへの体験談の掲載は、医療機関が広告料等の費用負担などの便宜を図って掲載を依頼しているといった誘引性が認められない場合には、広告に該当しないとされています。裏を返せば、謝礼や便宜と引き換えに口コミを依頼する運用は、広告として規制の対象になり得ます。依頼する場合の線引きは慎重に判断してください。

店舗型ビジネス全般でのチャネルの組み合わせ方は店舗集客に向いているWeb施策とは?広告・SNS・LPの使い分け、MEOの具体的な整え方はMEO対策(Googleビジネスプロフィール)とは?店舗集客の始め方と広告・SNSとの使い分けで解説しています。

違反になりやすい表現と、言い換えの方向

実際のサイト改修で指摘が多いのは、次のようなパターンです。

避けたい表現理由言い換えの方向
「地域No.1の実績」「最高の医療」比較優良広告広告可能な範囲で、実際の診療実績の事実のみを示す
「痛みのない治療」「絶対に安全」虚偽・誇大広告使用している設備や麻酔の方法など、事実として説明できる内容に置き換える
患者の感想・体験談ページ治療内容・効果に関する体験談は禁止診療の流れや所要時間など、患者が知りたい事実情報に差し替える
術前術後の写真だけを並べる誤認のおそれ掲載する場合は、治療内容・費用・主なリスクや副作用の説明を、読める大きさで同じ画面に付す
「今だけ○%オフ」「モニター募集」費用を強調した、品位を損ねる広告価格は自由診療の費用として、条件とあわせて淡々と示す
「審美歯科」「インプラント科」を診療科名として表示法令に根拠のない診療科名診療科名は政令等で認められた名称を使い、診療内容は別項目として説明する
「専門外来」広告可能な事項ではない特定の疾患や検査を外来で実施する旨として書く
医薬品の商品名を挙げる医薬品医療機器等法の広告規制医薬品を特定しない書き方にし、自由診療である旨と標準的な費用を併記する

広告以外の法令もかかります。指針では、医薬品医療機器等法、健康増進法、景品表示法、不正競争防止法との関係が明示されています。医療広告ガイドラインを満たしていても、これらに抵触すれば別途規制の対象です。価格や効果に関わる表現のチェック手順はLPの訴求は景品表示法に触れていないか?打消し表示・体験談・No.1表示のチェック手順もあわせて参照してください。

何を指標にするか

医療機関では、Web上のコンバージョン(予約フォーム送信)だけを見ても実態と合いません。電話予約と当日来院が相当数を占めるためです。次の3層で見てください。

指標取り方
最終新患数、自由診療の相談件数レセプト・予約システムの区分から集計
中間Web予約数、電話発信数、地図アプリでの経路検索数予約システム、通話計測、ビジネスプロフィールのインサイト
入口指名検索数、症状名検索での表示回数、地図での表示回数Search Console、ビジネスプロフィール

電話が主要な予約経路である以上、通話の計測は早めに入れておく価値があります。設定の実務は広告の電話問い合わせを計測する方法|通話コンバージョン設定の実務ガイドにまとめています。あわせて、初診の問診票に「何で知ったか」を1問入れておくと、Web計測では追いきれない経路が把握できます。

90日の進め方

  1. 1〜30日:現状の棚卸し。自院サイト・広告・SNS・ビジネスプロフィールの記載を洗い出し、指針に照らして修正が必要な箇所を一覧にします。ここを飛ばして集客施策を足すと、露出が増えるほどリスクが増えます
  2. 31〜60日:土台の整備。ビジネスプロフィールの情報を最新化し、自院サイトに診療内容・費用・リスクの説明と、医師の経歴などの運営者情報を整えます。予約導線をスマホ基準で見直します
  3. 61〜90日:流入を足す。整った受け皿に対して、症状名のコンテンツや広告で流入を足します。この順序を逆にしないでください

最初の30日は「増やす」ではなく「直す」に使ってください。表現の修正は費用がほとんどかからないうえ、後から一括で直すコストのほうが大きくなります。ページ数が増えてからでは、全ページを見直す作業が発生します。

LnXの見解

医療機関のWeb集客の相談で難しいのは、施策そのものより「どこまでやってよいか」の判断が院内で下せないことです。制作会社は作れますが可否の判断は持たず、院長先生は判断はできても毎回確認する時間がない。この隙間で、リスクのある表現が残ったままページが増えていく状態が起きます。

もうひとつは、他業種の型をそのまま持ち込んだ提案が通ってしまうことです。キャンペーン価格、体験談、ビフォーアフターといった、他業種では定番の訴求が使えない前提で設計し直す必要があります。使える手札が限られるぶん、勝負どころはビジネスプロフィールの整備と、自院サイトでの説明の丁寧さ、そして予約導線の使いやすさに集約されます。地味ですが、ここを整えた院とそうでない院の差は、新患数にはっきり出ます。

何から手をつけるか、外注先の提案をどう判断するかといった意思決定を、社外の視点で一緒に整理してほしいということでしたら、マーケティング顧問としてご相談いただけます。判断の軸を持てるようになれば、その後は院内で回していただける状態を目指します。

※本記事は一般的な情報整理であり、個別の表示の適法性を判断するものではありません。実際の表現の可否は、厚生労働省が公表する医療広告ガイドライン本文・Q&A・事例解説書、および所管の自治体窓口でご確認ください。

よくある質問

Q 院内に掲示しているポスターやパンフレットも医療広告になりますか?

医療広告ガイドラインでは、医療機関内部の掲示や内部で配布するパンフレット等は、情報の受け手が通常すでに受診している患者に限られるため、受診を誘引する意図という要件を満たさず、情報提供や広報と解されるとされています。ただし同じ内容をそのままウェブサイトに載せる場合は、扱いが変わり得ます。

Q 患者さんの声(体験談)をサイトに載せることはできますか?

医療機関が自らのサイトに掲載する、治療等の内容や効果に関する主観的な体験談は、医療広告として認められないとされています。一方で、第三者の口コミサイトや個人のSNSへの投稿は、医療機関が費用負担等の便宜を図って掲載を依頼しているといった誘引性がない限り、広告には該当しないとされています。

Q ビフォーアフターの写真は一切使えないのですか?

一律に禁止されているわけではありません。指針では、術前術後の写真に、通常必要とされる治療内容や費用等、主なリスクや副作用等に関する詳細な説明を付した場合は該当しないとされています。ただし、極端に小さな文字にしたり、リンク先の別ページに掲載したりする形は認められていません。また、限定解除の要件を満たさない広告では掲載できません。

Q リスティング広告でも自由診療の詳しい内容を書けますか?

書けません。限定解除は、患者が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイト等が対象で、バナー広告やリスティング広告はこの要件を満たさないと整理されています。広告のクリエイティブは広告可能事項の範囲に収め、詳しい説明は自院サイト側で行う設計にしてください。

Q 「審美歯科」や「インプラント科」を診療科名として掲げてもよいですか?

診療科名として広告できるのは、政令等で定められた名称に限られます。指針では、歯科に関係する名称として「インプラント科」「審美歯科」が、法令に根拠のない名称の例として挙げられています。診療科名とは別に、提供している診療内容として説明する形にしてください。

Q 制作会社に任せている場合、責任は誰が負いますか?

指針では、医師や医療機関だけでなく、広告代理店やアフィリエイターなど、何人も規制の対象になり得るとされています。外部に委託していても医療機関の責任がなくなるわけではないため、公開前に院内で内容を確認する手順を必ず設けてください。

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