この記事でわかること
- 「作り直し」と「部分改善」で、実際に変わるもの・変わらないもの
- どちらを選ぶかを決める5つの判断基準
- 作り直しを選ぶべき典型パターンと、部分改善で足りるパターン
- 部分改善で効く順番(どこから手を付けると数値が動くか)
- 作り直すと決めた場合に、捨ててはいけない資産
- 判断のためのチェックリスト
広告を回しているLPの成果が落ちてきたとき、社内では必ず「もう作り直したほうが早いのでは」という話が出ます。一方で、直近で作ったばかりのLPを作り直すのは費用も期間もかかります。この記事は、作り直すか、部分的に直すかを感覚ではなく基準で決めるための整理です。
作り直しと部分改善は、変えられる範囲が違う
まず、この2つは「規模の大小」ではありません。触れる層が違います。
| 部分改善(LPO) | 作り直し(リニューアル) | |
|---|---|---|
| 触れる層 | 文言・画像・要素の順番・CTA・フォーム | 訴求そのもの・情報設計・ターゲット設定 |
| 着手までの時間 | 数日〜2週間 | 1〜2か月(構成と原稿から作り直すため) |
| 広告の扱い | 配信を止めずに進められる | 公開まで旧LPで配信し続けるか、一時的に絞る |
| 検証のしやすさ | 1要素ずつ変えるので原因が分かる | 全部変わるので、何が効いたかは分からない |
| 効果の上限 | 今の訴求の枠内での改善に限られる | 訴求が外れていた場合、枠ごと変えられる |
ここで重要なのは最後の行です。訴求そのものが外れているLPは、部分改善では上限に当たります。ボタンの色を変えても、ファーストビューの写真を差し替えても、伝えている内容が読み手の関心とずれていれば、動く幅はわずかです。逆に、訴求が当たっているLPは、部分改善だけで十分に伸びます。
作り直すかどうかは「古いかどうか」では決まりません。公開から1年経っていても訴求が当たっていれば直す必要はなく、公開1か月でも訴求が外れていれば作り直したほうが早い。判断材料は経過年数ではなく、数値の落ち方です。
判断を分ける5つの基準
次の5つを順に確認してください。1つ目と2つ目で「作り直し」に振れたら、残りは見なくて構いません。
離脱の位置:ファーストビューか、その先か
ヒートマップやGA4のスクロール計測で、どこまで読まれているかを見ます。ファーストビューで大半が離脱しているなら訴求のズレ、中盤以降で落ちているなら情報不足や不安の解消不足です。前者は作り直し寄り、後者は部分改善で動きます。
- スクロール率25%地点までに大半が離脱 → 訴求・ターゲット設定を疑う
- 中盤〜フォーム手前で離脱 → 実績・料金・不安要素の追記で改善できる余地が大きい
流入の中身が、作った当時と変わっていないか
LPは作った時点のターゲットに最適化されています。その後に配信面を増やしたり、キーワードを広げたり、扱う商材を変えたりしていれば、来ている人が当時の想定と別人になっています。この場合、いくら部分改善しても構造的に噛み合いません。検索クエリの中身、配信面の構成、デバイス比率を当時と比べてください。
改善の打ち手が残っているか
すでにファーストビュー、CTA、フォーム、実績の見せ方を一通り試して数値が動かないなら、部分改善の余地は尽きています。逆に、フォームの項目数を一度も減らしていない、料金の記載を一度も変えていないという状態なら、まだ打ち手は残っています。試した施策とその結果を一覧にすると、残弾があるかどうかがはっきりします。
直せる状態にあるか(技術的な制約)
元データがない、制作会社にしか触れない、表示速度が遅く構造的に直せない、スマホ表示が崩れている。こうした場合、部分改善のたびに外注費と待ち時間が発生します。1回の修正に2週間と数万円かかる状態なら、作り直して自社で触れる形にしたほうが、半年単位では安くなります。
記載内容が事実と合っているか
料金改定、サービス範囲の変更、実績数値の更新、法令・ガイドラインの変更。中身が古くなっている箇所が複数ある場合、部分改善の積み重ねでは整合が取れなくなります。特に表示に関わる記載は、部分的な差し替えだとページ内で矛盾が残りやすい箇所です。
判断の前に、計測が入っているかを確認してください。スクロール率も離脱位置も取れていない状態では、この5つの基準のうち3つが判定できません。計測が無いまま「なんとなく古いから作り直す」を繰り返すと、次のLPでも同じ議論になります。
どちらを選ぶかの典型パターン
| 状況 | 判断 | 理由 |
|---|---|---|
| CVRは維持しているが、CPAが上がってきた | 部分改善 | LPではなく広告側の要因(競合・入札・配信面)の可能性が高い |
| ファーストビューで8割以上が離脱している | 作り直し | 訴求かターゲット設定が合っていない |
| フォームまで到達するが送信されない | 部分改善 | 入力項目・不安要素の解消で動く範囲 |
| 商材・料金体系そのものを変えた | 作り直し | 情報設計から変わるため、差し替えでは整合しない |
| 新しい配信面・新しいターゲットを追加した | もう1枚追加 | 既存LPを直すのではなく、訴求別に分ける |
| 公開1年、数値は横ばい、打ち手は未消化 | 部分改善 | 残っている施策を順に試すほうが早く安い |
5行目の「もう1枚追加」は見落とされがちな選択肢です。既存LPが特定のターゲットで機能しているなら、それを壊さずに別訴求のLPを増やすほうが安全です。分けるかどうかの判断基準はLPは1枚で足りる?訴求別・ターゲット別にLPを分ける判断基準と運用設計にまとめています。
部分改善で足りる場合、どこから手を付けるか
部分改善を選んだなら、効きやすい順に1つずつ変えます。同時に複数変えると、何が効いたか分からず次につながりません。
- ファーストビューの1行目:誰向けかを名指しする。ここだけで離脱が数ポイント動くことがある
- フォームの入力項目:必須項目を1つ減らすのは、コピーを100行直すより効くことがある
- CTAの文言と位置:「お問い合わせ」ではなく、押した先で何が起きるかを書く
- 実績・お客様の声の位置:不安が生まれる直前に置く。末尾にまとめても読まれない
- 料金の扱い:出すか出さないかで問い合わせの量と質が両方変わる
- 表示速度:画像の圧縮だけでも、スマホの離脱が変わる
各項目の具体的な直し方は、LPのファーストビューで離脱される原因と改善手順|スマホ基準で直す6要素とLPのCVRを改善する方法|広告成果を上げるチェックポイント完全版に分けて整理しています。
アクセスが少ないLPでは、A/Bテストより「1つ変えて2週間見る」のほうが現実的です。週のコンバージョンが数件の規模では、統計的な差が出るまでに数か月かかります。差が出るのを待つより、明らかに直すべき箇所を順に潰していくほうが速く進みます。
費用と期間の考え方
作り直しの費用は依頼範囲と発注先で大きく変わるため、金額のレンジはLP制作・改善の費用相場はいくら?依頼前に知るべきポイントを参照してください。ここでは、判断のときに見落とされやすい費用以外のコストを挙げます。
| 見落とされやすいコスト | 作り直しの場合 | 部分改善の場合 |
|---|---|---|
| 社内の稼働 | ヒアリング・原稿確認・検収で、担当者の工数が数十時間単位で発生 | 1回あたり数時間 |
| 学習のリセット | 広告側の最適化が一度リセットされる可能性がある | 影響は小さい |
| 公開までの機会損失 | 1〜2か月、現状の数値のまま配信し続けることになる | 数日で反映できる |
| 検証のやり直し | 過去に検証した結果が引き継げない | 積み上がる |
当社の実務では、作り直しの判断は「制作費」より「公開までの1〜2か月をどう埋めるか」で詰まることが多いという感触です。作り直すと決めたら、その期間の広告予算をどうするか(維持するか、絞るか、既存LPを最低限だけ直して繋ぐか)を同時に決めてください。
作り直すなら、捨ててはいけないもの
作り直しでよくある失敗は、前のLPで分かっていたことを一緒に捨ててしまうことです。新しいLPが前より悪くなるのは、たいていこれが原因です。
新しい制作に引き継ぐ資産
数値でわかっていること
- どの訴求・どのクリエイティブからの流入がコンバージョンしていたか
- ヒートマップで読まれていたセクションと、飛ばされていたセクション
- これまで試した施策と、その結果(効いた/効かなかった)
- フォームのどの項目で離脱していたか
中身の資産
- お客様の声・導入事例・実績数値(取得許諾の範囲もあわせて)
- 撮影済みの写真・動画素材と、その利用範囲
- 問い合わせフォームに実際に書かれていた言葉(見込み顧客の語彙)
技術面
- 計測タグの設計(イベント名・コンバージョン定義)を新LPでも同じにする
- URLを変える場合、旧URLからのリダイレクトと広告側のリンク差し替え
- 新LPの元データを自社で受け取る取り決め
計測の定義を変えてしまうと、前後比較ができなくなります。作り直しの効果を判断したいのに、コンバージョンの数え方が変わっていて比較できない、というのは実際によくあります。タグを入れ直すタイミングで定義を変えたくなりますが、比較したい期間が終わるまでは我慢してください。
判断チェックリスト
作り直しを検討する前に
数値の確認
- スクロール率・離脱位置を計測できているか
- ファーストビューでの離脱率を把握しているか
- 流入の中身(クエリ・配信面・デバイス)が制作当時と変わっていないか
打ち手の残り
- 試した施策と結果を一覧にしたか
- フォームの項目数を一度でも見直したか
- ファーストビューの1行目を書き換えたことがあるか
実行体制
- 1回の修正にかかる費用と日数を把握しているか
- 元データを自社で持っているか
- 作り直す場合、公開までの期間の広告運用方針を決めたか
LnXの見解
「作り直したい」というご相談を受けたとき、当社がまず聞くのは「ファーストビューで何割が離脱していますか」です。ここが答えられない場合、作り直しても同じ結果になる可能性が高いため、先に計測を入れることをお勧めしています。逆に、離脱位置がはっきりしていて、それが訴求のズレを示しているなら、部分改善で粘るより作り直したほうが早く安く済みます。
もう一つよくあるのは、LPではなく広告側が原因のケースです。配信面を広げた、競合が増えた、クリエイティブが摩耗した。これらはLPを何回作り直しても解決しません。LPと広告は同じ1本の導線なので、どちらが悪いかは両方の数値を並べないと分かりません。
当社は、広告の管理画面を見ている担当がそのままLPの改善判断まで持つ形で支援しています。数値を見る人と直す人が同じなので、「作り直すべきか、直せば済むか」の判断が同じ場で決まります。広告の配信からLPの制作・改善まで、まとめてご相談ください。
よくある質問
Q LPは何年で作り直すべきですか?
年数では決まりません。公開から1年経っていても、訴求が当たっていて数値が維持できていれば直す必要はありません。逆に公開1か月でも、ファーストビューで大半が離脱しているなら作り直しの検討対象です。判断材料は経過年数ではなく、離脱の位置と流入の中身です。
Q 部分改善を続けたのに数値が動きません。作り直すべきですか?
試した施策と結果を一覧にしてください。ファーストビュー・CTA・フォーム・実績の見せ方・料金の扱いを一通り試して動かないなら、部分改善の余地は尽きている可能性が高いです。ただし、その前に広告側の要因(配信面・競合・クリエイティブの摩耗)を確認してください。LPが原因でないケースがあります。
Q 作り直している間、広告は止めるべきですか?
原則として止めません。止めると学習や配信の実績がリセットされ、再開時の立ち上がりが遅くなります。予算を絞って配信を継続するか、旧LPの明らかな不備(フォームの項目数など)だけ先に直して繋ぐのが現実的です。
Q 作り直したら、URLは変えたほうがよいですか?
変えないほうが安全です。変える場合は、旧URLからのリダイレクト設定と、広告・SNS・資料など各所に貼られたリンクの差し替えを漏れなく行ってください。差し替え漏れがあると、そこからの流入がリダイレクト経由になり、計測の分断が起きます。
Q アクセスが少ないLPでもA/Bテストはすべきですか?
週のコンバージョンが数件規模だと、統計的な差が出るまでに数か月かかります。その場合はA/Bテストより、明らかに直すべき箇所を1つずつ変えて2週間ずつ見るほうが現実的です。同時に複数変えないことだけ守れば、何が効いたかは追えます。
Q 作り直すとき、前のLPから何を引き継げばよいですか?
どの訴求からの流入がコンバージョンしていたか、読まれていたセクションと飛ばされていたセクション、これまで試した施策と結果、フォームのどの項目で離脱していたか。この4つは必ず新しい制作に渡してください。加えて、計測タグの定義は変えずに揃えると、作り直しの効果を前後比較できます。