この記事でわかること
- AIO対策の作業を7工程に分解して内製可否を判定する方法
- 工程別に見た「社内でできること」と「外に出すべきこと」
- 内製する場合に必要な月間工数と人員の目安
- AI活用によって変わった内製のコスト構造
- 現実的なハイブリッド型の役割分担
- 内製化が止まる典型パターンと回避策
結論:全部か無かではない
AIO対策を内製するか外注するかは、しばしば二択で語られます。しかし実務では、工程ごとに向き不向きがはっきり分かれるため、全部を一方に寄せる判断はほぼ最適になりません。
結論として、多くの中小企業に適しているのは次の分担です。
- 社内が担う:一次情報の提供、事実確認、公開判断
- 外部が担う:設計、構造化データの実装、効果測定の仕組みづくり
- どちらでも可:記事の執筆、入稿作業
以下では、この判断に至る分解の仕方を説明します。
作業を7工程に分解する
AIO対策は、次の7工程に分けられます。まず自社がどの工程でつまずいているかを特定してください。
- テーマ設計:どの領域で引用される状態を目指すかを決める
- キーワード・プロンプト選定:対策する検索語と、AIに聞かれる想定質問を洗い出す
- 記事構成の設計:問いと答えが対応する見出し構造を組む
- 執筆:本文を書く
- 一次情報の付加:自社の数値・事例・手順を差し込む
- 技術実装:構造化データ、内部リンク、パンくずの実装
- 効果測定:引用率・流入・指名検索の計測と改善
工程別の内製可否
| 工程 | 内製の難易度 | 推奨 | 理由 |
|---|---|---|---|
| ① テーマ設計 | 中 | 共同 | 事業理解(社内)と検索の知見(外部)の掛け算が効く |
| ② キーワード選定 | 中 | 外部 | ツールと経験値の差が出やすい |
| ③ 構成設計 | 高 | 外部 | AIOを意識した構造は型を知らないと組めない |
| ④ 執筆 | 低〜中 | どちらでも | AI活用で難易度が下がった領域 |
| ⑤ 一次情報の付加 | 低 | 社内必須 | 外部には出せない情報。ここが差別化の核 |
| ⑥ 技術実装 | 高 | 外部(初回のみ) | 一度実装すれば以降は自動化できる |
| ⑦ 効果測定 | 中 | 共同 | 仕組みは外部、運用は社内が現実的 |
注目すべきは⑤です。一次情報だけは社内にしかありません。ここを外部に丸投げすると、どれだけ記事を増やしても一般論の集合体になり、AIに引用される理由がなくなります。
必要な工数と人員
完全内製を目指す場合に必要な月間工数の目安です。月4本の記事を継続する前提で試算します。
| 工程 | 月間工数 | 担当 |
|---|---|---|
| テーマ・キーワード選定 | 4〜6時間 | マーケ担当 |
| 構成設計(4本分) | 6〜8時間 | マーケ担当 |
| 執筆(4本分) | 16〜32時間 | ライター |
| 一次情報のヒアリング | 2〜4時間 | 事業側 |
| 入稿・実装 | 4〜6時間 | Web担当 |
| 効果測定・改善 | 3〜5時間 | マーケ担当 |
| 合計 | 35〜61時間 | — |
月35〜61時間は、専任者0.3〜0.5人月に相当します。人件費に換算すると月15〜25万円程度です。この数字を、外注した場合の見積と比較してください。相場はAIO対策(LLMO)の費用相場にまとめています。
AI活用でコスト構造が変わった
この試算で最も変動が大きいのが執筆工程です。生成AIの活用によって、1本あたりの所要時間は大きく圧縮できます。
ただし注意点があります。AIが出力した文章は、そのままでは使えません。必ず次の2つの工程が必要です。
- 事実確認:数値・固有名詞・制度の記述が正しいかを人が確認する
- 一次情報への差し替え:一般論の部分を自社の事例・数値に置き換える
この2工程を省くと、量は増えても引用されない記事が積み上がります。AI記事制作の落とし穴はAI記事作成代行の選び方で整理しています。
逆に言えば、この2工程を回せる体制さえあれば、内製のハードルは以前より確実に下がっています。
ハイブリッドの設計例
実務でよく機能する分担を、企業規模別に示します。
| 体制 | 社内が担う | 外部が担う |
|---|---|---|
| 担当者0.5人以下 | 一次情報の提供、公開判断 | 設計・執筆・実装・測定のすべて |
| 担当者1名 | 一次情報、執筆、入稿、日々の測定 | 設計、構造化データ実装、月次の方針レビュー |
| 担当者2名以上 | ほぼ全工程 | 四半期ごとの設計レビューのみ |
いずれの場合も、一次情報の提供は社内から外せません。逆に言えば、月に数時間、事業を説明できる人を確保できるかが最低条件です。
着手する順番
内製比率を上げていく場合、次の順番が安全です。
- 効果測定を社内に持つ:数字が読めない状態では判断ができません。まずここから
- 一次情報の棚卸しを社内で行う:自社にしかない数値・事例を一覧化する
- 入稿作業を社内に移す:公開のタイミングを自社で握れるようにする
- 執筆を社内に移す:型が固まってから着手する
- 構成設計を社内に移す:最後。ここが最も再現が難しい
逆の順番、つまり執筆から内製化を始めると、型が定まらないまま本数だけを追うことになり、多くの場合3ヶ月ほどで止まります。
内製が止まる典型パターン
内製化に踏み切ったあとで更新が止まるケースには、共通するパターンがあります。
- 目標本数が体制に対して過大:月8本を掲げて2ヶ月で息切れするより、月2本を1年続けるほうが結果が出ます
- 兼務担当者の本業が優先される:優先順位が下がると、真っ先に止まるのがメディア運用です
- 効果が見えないまま続けている:数字が見えないと、続ける理由を社内で説明できなくなります
詳しい対処はオウンドメディアの更新が止まる5つの原因を参照してください。
内製・外注・ツール導入の3択で比較する
内製か外注かの二択で考えられがちですが、実際には「AIO計測ツールを入れる」という第三の選択肢があります。これを同じ土俵で比べると判断を誤ります。ツールが解決するのは計測であって、コンテンツ制作ではないためです。
| 比較軸 | 内製 | 外注 | ツール導入 |
|---|---|---|---|
| 解決すること | 制作と計測の両方を自力で | 制作と計測の両方を委託 | 計測・可視化のみ |
| 主なコスト | 人件費と学習時間 | 月額の委託費 | 月額のライセンス費 |
| 立ち上がり | 遅い(3〜6か月) | 速い | 速い(設定のみ) |
| 社内にノウハウが残るか | 残る | 契約の設計次第 | データは残るが打ち手は残らない |
| 向いている状況 | 書ける人が社内にいる | 今期中に成果が要る | 記事はあるが効果が見えない |
ツールを先に入れるべきケース
記事はある程度の本数があるのに、AI検索で引用されているのかどうかが分からない。この状態であれば、ツールを先に入れる判断は合理的です。何が効いているか分からないまま制作を続けるより、計測を先に立てたほうが、そのあとの内製・外注どちらの判断も精度が上がります。
ツールを入れても解決しないこと
- 引用されるだけの一次情報や独自データがない、というコンテンツ側の問題
- 更新が止まってしまう、という運用体制の問題
- 出てきたレポートを誰が読み、次に何をするかを決めるのか、という意思決定の問題
導入を検討する際は、「出てきた数値を見て、来月何を変えるのか」を先に決めておいてください。ここが決まっていないと、ダッシュボードが増えるだけで終わります。指標そのものの置き方はAIO対策の効果測定で詳しく扱っています。
LnXの見解
内製か外注かというご相談をいただくとき、最初にお伝えしているのは「一次情報だけは社内に残してください」ということです。それ以外の工程は状況次第でどちらにも寄せられますが、ここを外に出すと差別化の根拠がなくなります。
LnXでは自社のオウンドメディアで、記事構成の設計から作成・入稿、SEOレポートまでをAIの定常タスクとして実装しました。約3ヶ月で113記事を入稿し、ページ表示回数は約7倍、問い合わせは約15倍、生成AIからのインプレッションは約7倍、AIOスコアは91点に達しています。
この規模を少人数で回せた理由は、書く速度を上げたからではなく、判断が必要な工程と作業の工程を分離したことにあります。テーマ設計と一次情報の付加には人が時間を使い、構成の量産と入稿はAIに任せる。この切り分けができると、内製のコスト構造は根本から変わります。ご相談いただければ、この切り分けの設計からお手伝いしています。
よくある質問
Q 社内にライターがいなくても内製できますか?
記事を書く工程だけを外注し、それ以外を内製する形であれば可能です。むしろ重要なのは、書き手より一次情報を出せる人がいるかどうかです。自社の商品・サービス・事例について答えられる方が月に数時間確保できれば、執筆自体は外部に任せても質は保てます。
Q 生成AIを使えば記事制作は内製できますか?
下書きの作成までは十分に可能です。ただし、そのまま公開できる品質にはなりません。AIが生成した文章には、事実確認が必要な記述と、自社の一次情報に置き換えるべき一般論が必ず含まれます。この確認と差し替えの工程を誰が担うかを決めないまま導入すると、量は増えても成果につながらない記事が積み上がります。
Q 構造化データの実装は社内でできますか?
サイトの作りによります。WordPressでプラグインを使える環境であれば、設定だけで基本的なスキーマは実装できます。静的サイトや独自CMSの場合は、テンプレートへの実装作業が必要になるため、一度は外部の手を借りるほうが早いことが多くなります。ただし一度実装すれば以降は自動化できるため、継続的な外注は不要です。
Q 外注から内製に切り替えるタイミングはいつですか?
記事の型が固まり、月次の運用フローが回っていることが条件です。具体的には、キーワード選定から公開までの手順が文書化されていて、担当が変わっても再現できる状態を指します。この状態になる前に切り替えると、外注時の品質を維持できずに更新が止まります。
Q 内製したほうがコストは安くなりますか?
記事本数が少ないうちは外注のほうが安くなります。専任者を1名置くコストは月45万円前後になるため、月4本程度の記事制作であれば外注のほうが安価です。内製が有利になるのは、記事以外の業務(LP改善、広告連携、データ分析)も同じ人が担える場合です。
Q 更新が止まってしまった場合、どう立て直せばよいですか?
本数の目標を下げることから始めてください。月8本で止まったなら月2本に落とします。止まる原因の多くは、目標本数が体制に対して過大なことです。詳しくはオウンドメディアの更新が止まる5つの原因の記事にまとめています。